複雑怪奇なラジオ

本日(6月16日)はコメント欄に様々なコメントをいただきありがとうございます。
そのうちの一つに「怪奇現象? - みむめもーど」で触れたラジオの野球中継に関するものがありました。
かつては福岡、北海道、名古屋のラジオ局は地元球団のビジターゲーム(対戦相手球団の本拠地での試合)の際にはスタッフが敵地に乗り込んで中継を制作していたことがありました。しかし広告収入の低下というか制作費の切り詰めというかの理由で乗り込み中継は無くなりつつあります。コロナ禍の前からなので新コロのせいではありません。

偶然か何か、きょう付の日刊スポーツにはラジオのプロ野球中継に関する読み物が載り、TBCラジオ「Goodモーニング」のオープニング「朝刊拾い読み」のコーナーで松尾武アナが紹介していました。拙blogでもその記事のリンクを貼っておきます。
www.nikkansports.com
この記事では自局では放送されない放送を「裏送り」ではなく「委託」と表現しています。ホームとビジターの2球団がある都市の局で放送される中継を「局間」と表現しています。NRNはニッポン放送文化放送をキー局とするネットワーク*1です。
記事の内容は主に、拙blogの「怪奇現象」のエントリでもさらっと触れました5月20日の「西武-ソフトバンク」について。
福岡にはAMラジオ局が2局あります。KBCラジオ文化放送ライオンズナイターをネットする「局間」(実況は文化放送の長谷川太アナ)、RKBラジオ文化放送に制作を「委託」(実況は文化放送OBの鈴木光裕アナ)、文化放送からしたらひとつの試合に2つの中継スタッフ。そのほかに「NRN」の本番カード(この日は「DeNA-中日」)が雨天中止になったときのために待機する第二予備*2もあり、メットライフドームには計3種類のスタッフがいたことになります。
しかしNRN本番カードと第一予備がそろって雨天中止となり、事情が変わります。第二予備が本番に繰り上がり全国ネットになります。この実況が御年79歳のニッポン放送宮田統樹アナであることも業界内では話題になりました。これに伴いNRN系列局のKBCラジオは「局間」から「NRN」ネットへ変更、文化放送ライオンズナイターは2局ネットから関東ローカルになりました。逆にRKBラジオの「委託」は阪神戦が中止になったABCラジオ、中日戦が中止になったCBCラジオ*3が加わり3局ネットでの放送となりました。
記事には『制作費は「委託」「局間」「NRN」の順に安くなるという。』と書かれています。KBCラジオからしたら文化放送の「局間」よりニッポン放送の「NRN」のほうが安いことになります。ライオンズナイターのネットを急遽取り止めるというのも懐事情を考えれば納得できるものになります。記事の締めに文化放送道スポーツセンターの佐藤勉部次長の言葉としてこんな文章が書かれていました。
「ラジオのプロ野球中継の仕組みをすべて理解している人は、業界内でも多くありません。『複雑怪奇』な世界です」

テレビは基本的に在京キー局を頂点とする系列にがんじがらめとなりますが、ラジオはある程度自由なので『複雑怪奇』な世界になります。ラジオのネットワークができたのはテレビのネットワークができた後! 昭和39年の東京五輪でテレビの普及が進みラジオの凋落が決定的になったことがきっかけとなったそうです。
今日の日刊スポーツにはもう一つラジオの話題があります。毎週水曜に中面2面を使って大展開されている東京五輪パラリンピック300回連載。今日のテーマはラジオ中継でした。
www.nikkansports.com
オリンピックは(長崎放送ではない)NBCという放送局の独占放送である米国と異なり日本ではNHKと民放連が共同で中継制作にあたっています。ラジオでも記事によれば共同制作機構・ラジオJCは『NHKと民放5局(TBSラジオ文化放送ニッポン放送Tokyo fm、J-WAVE)で構成している』そうで、今回の幹事はニッポン放送のようです。そのためか、ニッポン放送からJCに派遣される山内宏明アナと洗川雄司アナが紹介されています。洗川さんの紹介にはきちんと『趣味はセクシーなグラビア&DVDの研究』と明記されています。それはさておき、記事ではラジオ実況の魅力やラジオ中継の裏側などについて紹介されています。

*1:TBSラジオをキー局とするJRNと異なりNRNの正式名称は日本語で「全国ラジオネットワーク

*2:第一予備はMBSラジオ(金曜のみABCラジオのはず)が自社制作する阪神戦が入ることになっているらしい

*3:CBCラジオはNRN系列局ではないので、TBSラジオに「委託」して中継をするはずだった