毎年春秋に三才ブックス刊「ラジオ番組表」のデータ正誤確認の一環として調べているのですが、このところ興味をそそられる移動の情報を立て続けに目にしたのでいったんまとめておこうと思いました。
総務省のサイトの「予算執行の情報」というページで「補助金等交付決定」というEXCELファイルをダウンロードして「民放ラジオ難聴解消支援事業」という事業を探しているのですが、現在最新のファイル令和6年度第2四半期(今年7月から9月)には情報はありません。
しかし、東北総合通信局から『「令和6年度無線システム普及支援事業費等補助金(民放ラジオ難聴解消支援事業)(第3次)」の交付決定』というのが10月17日付と11月29日付の2度出ています。いずれも『総務省は、昨日、』という書き出しなので実際の交付決定は10月16日、11月28日だったのでしょう。
10月16日のほうは2件
・株式会社アイビーシー岩手放送 野田補完中継局(九戸郡野田村内)の整備
・山形放送株式会社 鶴岡補完中継局(鶴岡市内)の整備
いずれも補助割合は2分の1。金額は鶴岡は野田や後述の福島の2倍です。
なお、鶴岡局に関しては総務省本省より11月8日付で『FM補完中継局の免許申請の受付』というプレスリリースが出ており、92.4MHz、100WのFM補完中継局の免許の申請を受け付けていました(12月11日締め切り)。
11月29日のほうは1件
・福島県広野町 株式会社ラジオ福島及び株式会社エフエム福島の受信障害対策中継局の整備
補助割合は3分の2。広野町と言えば2021年8月18日付で補助金交付決定のプレスリリースが出ており、その際はNHK第一、ラジオ福島、ふくしまFMの3波の受信障害対策中継局を2局建てています。今回はその時の金額に近い額なのですが、NHKが入っていません。さて今回は2局なのか何局なのか。
予備免許付与
本免許が下りる前には予備免許が降ります。地方によっては予備免許が出ていることが各地方の総合通信局より発表されます。今回は3局あります。
埼玉県上尾市のコミュニティ放送局に予備免許
河内長野市のコミュニティ放送局に予備免許を付与 -大阪府内で7局、近畿管内で41局に-
八尾市のコミュニティ放送局に予備免許を付与 -大阪府内で8局、近畿管内で42局に-
表にしておきます。
申請者名 |
識別信号*1 |
周波数(MHz) |
出力(W) |
設置場所 |
予備免許付与日 |
開局予定日 |
あげおエフエム株式会社 あいラジ |
JOZZ3DF-FM あげおエフエム |
89.1 |
20 |
埼玉県上尾市 |
令6.12.4 |
2025年春 |
奥河内ラジオ株式会社 |
JOZZ7BW-FM おくかわちエフエム |
80.7 |
20 |
大阪府河内長野市 |
令6.12.13 |
2025年2月 |
株式会社八尾タイムズ |
JOZZ7BX-FM やおエフエム |
79.2 |
20 |
大阪府八尾市 |
令6.12.18 |
2025年2月 |
上尾市の「あいラジ」は上尾市の「あ」と隣の伊奈町の「い」で「あい」なのでしょうね。
河内長野市、八尾市の局に関して、放送区域図にいつもと違うところがあります。ふつうは地上4mの高さで電界強度0.25mV/m以上の区域が表示されます。河内長野市や大阪狭山市などは0.25mV/m以上なのですが、富田林市は1mV/m、堺市や八尾市は2mV/mになっています。河内長野市は面積的には北半分しかカバーできていないように見えますがそれで市街地はほぼカバーできているらしく放送区域内世帯数は9割を超えています。逆に大阪狭山市はほぼ全域をカバーできているように見えますが放送区域内世帯数は7割弱のようです。
八尾市の局は局名が分かりません(社名とは異なる名前にするかと思います)。旧「やおコミュニティ放送(FMちゃお、1998.4-2024.3)」と同じ周波数だそうですが、放送区域内世帯数は新局は旧局(予備免許時は出力10W)の半分ちょっとほどに少なくなっています。電界強度のせいでしょうか。
本免許付与
今回は本免許付与のプレスリリースは地方総合通信局からは出ていません。
2024年9月18日付で中国総合通信局から受信障害対策中継局を設置とプレスリリースが出ていた広島県三原市の3つの受信障害対策中継局は12月下旬開局予定ということだったと思うのですが、放送開始しているのでしょうか?
放送局の移転
今回私が興味を持ったことのひとつがこれでして。
富山県射水市のコミュニティFM局「FMいみず」*2。こちらのサイトの「トピックス」に『社屋移転と放送休止のご案内』が載っています。
太閤山ショッピングセンター「パスコ」が老朽化で取り壊されるため、 当社は、富山情報ビジネス専門学校に移転することになりました。 ただ、送信アンテナの移設工事などに相当の期間が必要となり、 8月5日から10月末まで、放送を休止させていただきます。
ショッピングモールの中にスタジオを置くコミュニティFM局はいくつかあるはずなのですが、地上波テレビ局でもありましたっけ、その施設が閉鎖されれば放送はできなくなってしまうのですね。そこで専門学校に移転するというのが斬新だなぁと思いました。局のサイトには11月1日よりその専門学校から放送を再開し、学生も番組作りに参加する旨の紹介文が載っています。
そういえば、宮城県大崎市のコミュニティFM局「OCR FM835」、かつての「Bikki-FM」ですが、2019年6月に大崎市古川七日町のビルから大崎市三本木の大崎市三本木庁舎に移転していました。それが大崎市古川十日町のビルの1階に移転しました。これって話題に上っているのでしょうか。放送局に詳しいサイト「でんぱでーた」には情報が上がっていません。私も聴けていないので状況がつかめていません。コミュニティFMに詳しいサイト「コミュニティFM大図鑑」では
2024年3月29日にスタジオ移転とメンテナンスを理由に、同日17時から7月29日13時まで放送を休止していました。
と紹介されています。局のサイトでも『おおさきエフエム放送は、7月29日13時より再開しました。』というお知らせが出ています。
もうひとつ面白いと思った移転が、NHKのAMラジオの米沢中継局、NHK的な呼び方をするなら米沢ラジオ中継放送所です。
「でんぱでーた」の掲示板の書き込みで知ったのですが、そこに載っていたリンク先、置賜地方に詳しいサイトというかブログというか「おきたまラジオNPOセンター」のダイアリーを読みますと、移転の理由がユニークでして。昭和27年4月から建っていてJOJQというコールサインもあったそうなのですが、その場所が米沢城址のすぐそばで、送信アンテナが景観を害しているからだというのです。でググってみたら移転運動をしていた人たちもいたようで、NHKも2021年9月に移転用地を取得できたことからこの度移転したということのようです。これまでの送信所は市有地だったそうなので跡地は市に返還されることになります。移転先の直江石堤という場所はGoogleマップを見る感じだと市街地の南端という印象です。周波数や出力に変更はないようです。
放送局の合併
「エフエムしみず」と「シティエフエム静岡」合併
「ちびまる子ちゃん」でおなじみ静岡県清水市が静岡市と合併したのは2003年4月のこと。それから22年。旧・清水市の「エフエムしみず」(マリンパル)と旧・静岡市の「シティエフエム静岡」(FM-Hi!)が2025年4月1日付で合併し「エフエムしみず静岡」(S-Wave)になることになったのだそうです。12月20日付で両社のサイトで発表されています。「しみず」の名が先に来ていて社長も清水から出るようですが、本社所在地は静岡ですし、周波数も静岡のもの。静岡のサイトでは合併のお知らせの後に『静岡市が販売した緊急情報防災ラジオの内、マリンパル用のラジオについては、緊急情報が放送されるよう設定変更が必要となります。』とあります。また、清水のサイトでは年末特番のお知らせに『エフエムしみずは来春、28年の歴史に幕を閉じます。』と明記されていることから、清水の局がなくなるという認識なのかもしれません。
政令指定都市で区ごとにコミュニティFM局があるところも仙台とか札幌とかいくつかあるのですが、静岡のサイトの合併のお知らせには
当時から「情報の共有化、迅速化のためにも統合した方がいいのではないか」ということはあがっていましたが、特に一昨年の台風15号災害の際に静岡市で甚大な被害が発生し、その機運は一気に盛り上がり、コミュニティエフエムが強みとしている災害時発信の統一が各方面から求められています。
とあるので、静岡市では旧市別、区別に細かく情報を伝えるというよりは全市的に情報を一元化すべきという考えのようです。
ラジオ局ではありませんが、BSデジタル放送でジャパネットの傘下に入ったスターチャンネルのリモコン番号10にBSJapanextが引っ越してきます。10を押したときのメインがBSJapanext改めBS10、サブがスターチャンネルということになるようです。来年1月10日からです。
閉局
新潟県十日町市のコミュニティFM局「FMとおかまち」は5つの中継局を持っていたのですが、そのうちの4つ、仙田、白羽毛、松里、浦田の4中継局が10月30日をもって閉局しました。
理由の一つは施設の老朽化なのですが、もうひとつは十日町市が令和3年10月より新しい防災情報システムとしてデジタル同報系防災行政無線を本格稼働したことにあります。十日町市は防災行政無線の戸別受信機を全世帯に配布しそちらを利用することにして、令和4年4月からはエフエム告知受信機を利用しないことにしたのでそうです。コミュニティFMに市役所から緊急割り込み放送をするのがトレンドだと思っていたのですが、必ずしもそうではないようです。
今秋に入った情報の中で最も興味をそそられるのが、米軍向けの放送局AFNの佐世保局(1575kHz)がFM(93.1MHz)で放送されているらしいというものです。AMの放送を止めたわけでは無く現地では小さく聞こえるということらしいです。
現地に行って確認するわけにいきませんから、そうなんだ、と思うしかないわけですが、日本の電波行政の管轄外でありながら日本と同じ9kHz刻みの周波数設定にするなど日本に寄せている部分もあるAFNがに民放AM局に合わせてFM波に転換するとするなら、面白い話だなぁ、と思います。基地の周辺の人たちだけ聴ければよいのだからFMであっても問題は無いのかもしれません。
日本では現在三沢、横田*3、岩国、佐世保の各基地からAMで、沖縄のキャンプ・フォスターからAMとFMで電波が出ています。
と思いきや、Wikipediaを見ると沖縄のAMは送信鉄塔が落雷被害などのため6月から放送を休止しているようです。『AFNでは空中線鉄塔をいったん撤去の上、台風シーズンを避けて2024年12月又は2025年1月から再建に着手、2025年7月には所定の10kWでの放送再開を目指している』と書かれていますので、今のところ沖縄の放送はFMのみだと思われます。