NHK経営委員会の議事録から『ラジオ中継放送局の設置計画について』というのを取り上げるということを毎年春ぐらいにやっているのですが、今年は取り上げられてないなと気になっていました。改めて過去の議事録を読み返してみたら、『ラジオ中継放送局の開局について』はいつも通り春、4月20日開催の第1376回NHK経営委員会で報告されており、『ラジオ中継放送局の設置計画について』は少しずれて夏、8月31日開催の第1383回NHK経営委員会に諮られ、原案通り議決されました。
ラジオ中継放送局の設置計画について
今回議決されたのは、高知県の柏尾山(かしおやま)。ラジオ第一の新木ラジオ放送所*1には津波による浸水被害が想定されているため、地デジの主送信所がある柏尾山にFM補完中継局を設置するというもの。2022年度の開局予定ということです。
議事録を見ると高知では放送会館の建て替え計画も進んでいるようです。5月25日開催の第1378回NHK経営委員会で津放送会館と共に報告されています。これまで地域放送会館については標準的な仕様というのがあったのだそうですが、今回の津と高知からは面積や設備を一律とせず、経済合理性を踏まえたうえで地域性や立地などに応じた機能、規模とすることにしたのだそうです。具体的に高知について言うと、まとまった土地が確保できなかったために現会館の隣接地に浸水被害を考慮した6階建ての新会館を建て、津波による浸水想定区域外にサブステーションを建てるということになりました。同じ趣旨で2013年4月に朝倉報道拠点を開設しているのですがそこよりは中心部に近い場所になります。
ラジオ中継放送局の開局について
2020年11月から2021年3月までの間に、ラジオ中継放送局が3局開局しました。いずれもラジオ第1をFM波で放送するものです。これにより、約1万200世帯でラジオの受信状況が改善されることになるそうです(受信可能な世帯数は約4万2千)。
県名 | 局名 | 送信出力 | 周波数 | メディア | 申請世帯数 | 開局年月日 |
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石川 | 輪島門前(わじまもんぜん) | 30W | 79.5MHz | R1 (FM波) | 約2.3千 | 2020年11月17日 |
岡山 | 高梁(たかはし) | 10W | 89.6MHz | R1 (FM波) | 約7.7千 | 2021年 3月1日 |
島根 | 浜田(はまだ) | 100W | 81.7MHz | R1 (FM波) | 約3.2万 | 2021年3月11日 |
これらの開局により、NHKの送信所はラジオ第1放送は275局、ラジオ第2放送は146局。そのうち中波放送はラジオ第一が224局、ラジオ第二が140局。(民放AM局で言うところのFM補完放送に相当する)FM波を使った放送はラジオ第一が51局、ラジオ第二が6局。となるはずです。
さて、この報告がされた時の議事録で、森下経営委員長からの質問に答える形で当時の児野技師長が興味深い発言をしています。
現在、中継局を5局ぐらい検討中です。そのほかに基幹局も5局ほど残っています。現行制度では、中継放送局にFM波を使うことは認められていますが、基幹放送局での使用は認められていません。現行制度の改正を求めていくと同時に、技術的にもほかの方策がないか検討しています。
先述の柏尾山中継局は実質的に高知放送局の主送信所の補完放送だと思うのですが。制度が変わったのかな、現行の制度でも対応可能という解釈になったのかな。
2020年の設置計画について
昨年、中継局を設置するということになった局は5局ありました。昨年拙blogで書いた物から再掲しますと
- ラジオの受信改善を目的とするもの
- 津波対策のもの
いずれもラジオ第一のFM補完中継局で2021年度開局予定なので、今後開局情報が出てくるものと思われます。たとえば、ググっていたら福岡局から上之牧中継局建設の入札公告が今年3月9日付で出ていて、納期が12月28日になっています。てことは電波が出るのは年明けかな。
*1:議事録では送信所を意味する『放送所』がなぜか『放送局』と書かれている