ここ最近のFM局予備免許について 2021春

半年に一度の定例行事です。
自分なりにできる限り調べてはいますが誤りがあったり抜けているものがあったりしているかも知れません。最後に調べたのは4月23日です。

補助金交付 済み 決定

AMラジオ局のFM補完中継局の設置については「無線システム普及支援事業費等補助金(民放ラジオ難聴解消支援事業)」という制度があります。
2020年度の第2次の交付決定は昨年8月17日付で対象は小樽市福島県広野町三原市。そのうち交付決定のプレスリリースが出たのは福島県広野町(東北総合通信局)のみ、FM方式によるAMラジオ及びFMラジオの受信障害対策中継局を整備とのことです。交付割合は3分の2です。後で触れる福島県葛尾村のように福島のNHK第一ラジオ福島ふくしまFMの3波を再送信するのだと思います。
三原市についてはコミュニティFMの中継局の免許が下りた際にこの制度を利用したことが記されています。

 この中継局の開設に対し、総務省は、施設を整備する三原市(市長: 岡田 吉弘)に対し、令和2年度無線システム普及支援事業費等補助金(民放ラジオ難聴解消支援事業)として、25,588千円を交付する予定です。

本免許が出るというプレスリリースで補助金を交付する「予定です」ということは、補助金がもらえるのは交付決定の時ではなく開局した後なのですかね。
小樽市では市のwebサイトに市政情報番組の音声データと書き起こしテキストを3年分ぐらい保存しているのですね。FMおたる「明日へ向かってスクラムトライ!」という番組の令和3年1月4日の放送内容から
・桂岡、張碓(この2地域は小樽市の東部)、オタモイ(小樽市の中心部からは北西方向)の三つで中継局をまさに今作っている最中で、新年度からはこの3局付近の方々にも電波でFMおたるを聞いていただけるようになるのではないか
・だいたい8000世帯くらい難聴世帯があるが、この中継局ができることによって、約5000世帯が解消される
ということだそうで、FMおたるの受信障害対策中継局を3局建設中であると思われます。ただし市議会の議事録(令和 2 年 3 月 9 日 総務常任委員会会議録)によると、小樽市の西部には地形的難聴が残る地域があるほか、FMおたる(76.3MHz、20W)は札幌市西区三角山放送局(76.2MHz、15W)と周波数が近接しているので小樽市の東端にある銭函などの地域では混信の恐れがあり、更なる中継局の整備はできなさそうで難聴地域は残るようです。意外と小樽市の市域は細長いようです。
話が長くなりました。
第3次交付決定は今年2月10日付でプレスリリースが出ているのは静岡放送(東海総合通信局)。ほかにもあるのかどうかは総務省のサイトの「予算執行の情報」のページの情報がまだ更新されていないので私にはわかりません。
静岡放送は『この補助金を活用してFM中継局を整備し、地理的・地形的要因等によりAM放送の受信環境が著しく悪い御殿場市裾野市及びその周辺地域において、FM放送によりラジオの受信状況を改善する予定』とのことです。交付割合は3分の2です。

予備免許付与

本免許が下りる前には予備免許が降ります。昨秋以降予備免許が出ていることが各地方の総合通信局より発表されているものを列挙します(予備免許のプレスリリースを出さないことにしているところもあります)。

本免許付与

本免許のプレスリリースが出た例は以下の通りです。

  • 2021年3月26日
    • エフエムさいき(大分県)の放送エリアが拡大 -さいき市民放送株式会社の中継局4局に免許-
  • 2021年2月5日
  • 2021年1月22日
    • 熊本県阿蘇地区で熊本放送のFM補完放送が聴取可能に -AM放送の難聴解消のためのFM補完中継局に免許-
  • 2021年3月18日
  • 2021年2月26日
    • 静岡放送株式会社の下田FM補完中継局に免許 <下田市におけるラジオの受信環境を改善>
  • 2020年11月12日
  • 2021年1月21日

開局済みの局

プレスリリースは必ずしも公表されるとは限らないので、総務省電波利用ホームページにある無線局等情報検索でここ最近の免許付与について検索してみます。
免許の年月日が2020年11月2日以降であるものは41件ヒットしました。

放送局 中継局名*1 設置場所 周波数(MHz) 出力(W) 免許付与日 開局日
株式会社エフエム真岡 JOZZ3CV-FM
エフエムもおか
栃木県真岡市 87.4 20 (25) 令和2年11月2日 令和2年11月15日
株式会社エフエム雪国 神立*2 新潟県南魚沼郡湯沢町 76.2 3 (8.5) 令和2年11月10日
日本放送協会 NHK輪島門前R1 石川県輪島市 79.5 30 (39) 令和2年11月12日 令和2年11月17日*3
株式会社新潟放送 高田FM 新潟県上越市 94.8 30 (45) 令和2年11月30日 令和2年12月1日
エフエム魚沼株式会社 山新 新潟県魚沼市山新 81.4 3 (2.6) 令和2年12月11日 令和2年12月15日*4
大館放送株式会社
ラジオおおだて
JOZZ2BS-FM
おおだてエフエム
秋田県大館市 81.4 20 (8) 令和2年12月23日 令和3年1月17日
株式会社アクティブレイン
SKY WAVE FM
JOZZ3CW-FM
アクティブレインエフエム
千葉県千葉市中央区 89.2 20 (43) 令和3年1月6日 令和3年1月15日
青森放送株式会社 大間下北FM 青森県下北郡大間町 78.8 20 (40) 令和3年1月21日 令和3年1月25日
合同会社YAMATO
FMヤマト
JOZZ7BT-FM
エフエムヤマト
奈良県大和高田市 77.5 5 (6.6) 令和3年1月21日 令和3年2月11日
株式会社熊本放送 RKK阿蘇FM 熊本県阿蘇市 92.3 3 (3.2) 令和3年1月22日 令和3年2月1日
葛尾村 (村内11か所) 福島県双葉郡葛尾村 89.0
81.8
90.8
0.1 (後述) 令和3年1月29日 令和3年3月1日*5
株式会社柏崎コミュニティ放送
FMピッカラ
柏崎芋川FM 新潟県柏崎市大字加納 76.3 10 (13) 令和3年2月1日
水上村 古屋敷SFM 熊本県球磨郡水上村 80.0 0.24 (0.25) 令和3年2月5日 令和3年2月22日
川口SFM 80.0 0.25 (0.16)
日本放送協会 浜田補完 島根県浜田市 81.7 100 (340) 令和3年2月16日 令和3年3月11日
深谷コミュニティFM株式会社
FMふっかちゃん
JOZZ3CY-FM
ふかやエフエム
埼玉県深谷市 88.5 20 (17.5) 令和3年2月18日 令和3年4月1日
株式会社小江戸FM
ラジオ川越
JOZZ3CX-FM
こえどエフエム
埼玉県川越市 88.7 10 (8.7) 令和3年2月24日 令和3年2月28日
日本放送協会 高梁R1 岡山県高梁市 89.6 10 (17.5) 令和3年2月25日 令和3年3月1日
静岡放送株式会社 下田 静岡県下田市 90.1 10 (10.5) 令和3年2月26日 令和3年3月8日
三原市 三原市鷺浦SFM 広島県三原市 87.4 0.25 (0.79) 令和3年3月18日 令和3年4月1日
三原市幸崎01SFM 広島県三原市 87.4 0.25 (0.41)
三原市幸崎02SFM 広島県三原市 87.4 0.25 (0.41)
三原市幸崎03SFM 広島県三原市 87.4 0.25 (0.41)
三原市幸崎04SFM 広島県三原市 87.4 0.25 (0.41)
三原市木原01SFM 広島県三原市 87.4 0.25 (0.41)
三原市木原02SFM 広島県三原市 87.4 0.25 (0.79)
さいき市民放送株式会社
FMさいき
畑野浦FM 大分県佐伯市蒲江 76.3 20 (32) 令和3年3月26日 令和3年4月1日
板戸山FM 大分県佐伯市宇目 76.3 20 (32)
背平山FM 大分県佐伯市蒲江 76.3 20 (32)
米花山FM 大分県佐伯市本匠 76.3 20 (32)
株式会社ほんじょうFM JOZZ3CZ-FM
ほんじょうエフエム
埼玉県本庄市 89.3 15 (12.5) 令和3年4月1日 令和3年4月14日


免許付与日の順に並べているのだけど、開局の順番と必ずしも一致していません。今年になって埼玉県にコミュニティFMが立て続けに3局開局しましたが、免許は深谷市が先、川越市が後でしたが開局は川越市が先、深谷市が後です。呼出符号のアルファベット順も川越市が先、深谷市が後です。深谷市は市のゆるキャラ(イメージキャラクター)の名前を冠しているのが珍しいと思います。川越市の局は2009年上期のNHKの朝ドラ「つばさ」の中で宅間孝行さん演じる元官僚が立ち上げた「ラジオぽてと」をドラマの中の話から現実にすることができました。
千葉市秋田県大館市の局は去年のうちに開局するつもりだったのだけど今年にずれ込んでしまいました、これもみんなコロナのせい。千葉市の局、アクティブレインはactiveなrainではなくactyなbrainなのだそうです、知らんかった。アクティはホンダの軽トラの車種名でもあります(Wikipediaによると今年6月で生産終了予定だそうです)が、アクティブレインの祖業は物流業で、ちなんでいるのかな? 仙台市の営業所にサテライトスタジオがあるのだそうです(千葉市内と東京・池袋にもあるようです)。
出力の欄のカッコ内の数字は最大実効輻射電力。極めて大雑把に言えば、特定の向きには出力がより強くなるように設定している、その値。詳細は各自ググってください(私も勉強中で教えられるほどではないので)。
NHKのFM補完中継局は電波の型式がF3E、つまりモノラル放送であることが多いのだけど、今回は輪島と葛尾村の再送信局がモノラル、浜田と高梁はF8E、つまりステレオ放送と表示されている。浜田と高梁の局名は中国総合通信局からのプレスリリースがないのでそれぞれの開局チラシpdfからの推測。
葛尾村の再送信局、と書いたけど、葛尾村の各局はNHK福島のラジオ第一、ふくしまFMラジオ福島の3つの放送を発信している。NHK第一は電波の型式が100KF3E、モノラル放送で使用する電波の幅が狭いというもののようで周波数は89.0MHz。ふくしまFMラジオ福島は電波の型式が200KF8E(ステレオ放送)で周波数はふくしまFMが81.8MHz、ラジオ福島が90.8MHzとどちらも福島・郡山の親局と同じ周波数。出力はいずれも0.1W、ただし最大実効輻射電力は局によって異なり、謎のコード(DFCD=0001267408-0001267418)順に0.13W、0.12Wが4局、0.25W、0.12Wが3局、0.25W、0.12Wと微妙に異なってる。しかしこれら11局が村内のどこにあるかが公表された資料は見つけられない。
水上村熊本放送の放送、三原市はFMみはらの放送を再送信する受信障害対策中継局。再送信は一応法律用語としては再放送と呼ぶことになっているのだけど、九州総合通信局水上村に関するプレスリリースでは再送信という単語が入っている。
三原市の7局の局名と最大実効輻射電力の対応が一致しているかどうかはわからない(局名はプレスリリースに書かれている番号順、最大実効輻射電力は謎のコード順、順序を変える必要は無いと思うので一致しているのではと推測するのだけど)。何地区の何番という局名は斬新だと思います。末尾のSFMは受信障害対策中継局であることを表すものです。

未開局の局

予備免許が下りていてまだ本免許が下りていない局はFMまいづるの2局だけかな。これ以外に公表されていないものがある可能性はあります。

放送局 設置場所 放送区域 周波数(MHz) 出力(W) 予備免許付与日 開局予定
一般財団法人有本積善社
FMまいづる
舞鶴市字野原 舞鶴市大浦地域の一部 77.5 10 令和3年2月18日 令和3年5月
舞鶴市字桑飼上 舞鶴市加佐地域の一部 77.5 20

局名が明示されていない代わりに「放送を行おうとする区域」が示されています。

免許の継承と閉局

今期は分社化とか経営悪化に伴う経営移譲とか、それぞれの事情で放送局の免許が移動した事例がいくつかあります。本稿が長くなりすぎているので稿を分けます。取り上げるのはMBSラジオ、エフエム上越、ナナコライブリーエフエム(旧クローバーラジオ)、エフエムせとうち、FMノースウェーブです。

*1:コミュニティFMの親局については呼出符号と呼出名称

*2:ソースは2020年11月の第4回放送番組審議会議事録のpdf。湯沢中継局の移転に伴い湯沢町役場(湯沢町大字神立)に設置された中継局。

*3:ソースは「広報わじま」2020年12月号18ページ

*4:FMうおぬまでパーソナリティを務める方のTwitterによると、この日福山新田中継局の開局記念の番組があったらしい。

*5:ソースは「広報かつらお」2021年3月号13ページ