気になった受信障害の記事2題

昨日(2月11日)の新聞読んでなかったなと思って探してみたら、興味深い記事がいくつかあったので紹介したいと思いました。

まず一面の脇の方。『風力発電 TV受信障害招く 潟上』という見出し。
こういうとき、河北新報のwebを探してリンクを貼るのだけど、探してもこの記事が出てこない。なぜこの記事はwebに出していないのだろう。
余りすべきことではないのだろうとは思うのだけど、新聞紙を写真に撮って貼り付けてみる。

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検索すると、秋田魁新報朝日新聞のwebで昨年12月に記事にしていました。昨年8月ごろからテレビの受信障害が起きているのだそうです。
テレビが映らない! 潟上市で受信障害、風車新設が原因か|秋田魁新報電子版
秋田)テレビ障害で問い合わせ相次ぐ 発電用風車影響か:朝日新聞デジタル
(※いずれの記事も会員登録しないと全文が読めません。)
秋田市とその北隣にある潟上市天王(旧・南秋田郡天王町)の、日本海に面した県有保安林には2つの事業者が建てた風力発電の風車が17基と22基、秋田県の公募事業として整備されたのだそうです。
河北の記事にある地図によると、受信障害の影響がある地域は風車の北側。たぶん天王町の中心部。位置関係としては南から順に、秋田市のテレビの電波を発信している大森山送信所(秋田市浜田)、22基の風車、17基の風車、受信障害の影響がある地域が一直線に並んでいる。
感覚的には39人でエグザイルごっこをしている後ろの40番目の人は見づらいということなのかな。
そういう話じゃないですね。具体的な影響の例が東北総合通信局のサイトに出ていました。
総務省|東北総合通信局|風力発電による放送受信への影響防止についてのご協力のお願い

風車が回転することにより、放送波を断続的に遮断することから、テレビの画像にブロックノイズ(右画像参照)が断続的に発生します。ひどいときにはブラックアウトしてしまいます。

リンク先に出ているブロックノイズの参照画像をみると、これじゃ見られたもんじゃないですわね。
東北総合通信局と言えば、3年前に秋田県男鹿市風力発電の事業者が受信障害対策中継局を設置した事案がありました。
総務省|東北総合通信局|秋田県男鹿市の受信障害対策中継局に免許
4か所で1050世帯が対象になっています。この男鹿市船越というのは天王町の隣なんですね。Googleマップで見ると確かに秋田から男鹿にかけて海岸線沿いに風車が並んでいるのね。風力発電が盛んな土地柄なんだなぁ。
河北の記事の話に戻ります。記事では、『電波障害について2事業者は風車の着工前に自主的に調査し、「障害は発生しない」と結論付けていた』といいます。シミュレーションでは大丈夫でも実際は起こることは電波ですからあるのでしょう。2つの事業者のうちの一方は『11、12月に住民説明会を開き、アンテナの位置調整やブースター設置を進め』ているそうで、もう一方も『『映りが悪い』などの連絡があれば、その都度対応する』という考えだそうで、どちらの事業者もきちんと対応を取っているようです。しかしそれで解決したかと言われれば、障害が解消したわけでは無いようで、記事で紹介されている住民は『今でも時折映像が乱れる状態が続く』ということのようです。
秋田県は昨年末時点で250基の風力発電用の風車があるそうで、沖合で洋上風力発電の計画も進行中など風力発電が盛んなようなので、受信障害はこれからますます増えるかもしれません。記事にはありませんがたぶん解決策としては、男鹿市の受信障害対策中継局のプレスリリースに書かれてある『良好な受信点で受けた電波を障害対象地域に搬送して再送信する』、もしくはケーブルテレビ化するということになるのかと思われます。


ケーブルテレビと言えば、社会面に不思議な記事が出ていました。
www.kahoku.co.jp
酒田市のケーブルテレビが昨年12月から放送を停止していることが分かったというのだけど、

  • 法人登記手続きを長年怠り運営母体が昨年12月11日付で「みなし解散」となった
  • 事務所と放送設備を置いていた雑居ビルが12月29日に全館で停電、老朽化が激しく建物所有者(千葉県松戸市)も復旧工事に着手しないため、技術的にも放送できない状態となった
  • 業務を一人で担ってきた社長が今年1月末に死亡。ほかに取締役や従業員はいないとみられ、事業の継続や清算に動く関係者が全くいない状態

そんなことあります?
12月29日から放送されていないことが分かったのが2月10日って。それまで気づかれなかったの?
そういうことじゃない。
河北新報によれば、酒田市の民間企業「庄内社会教育事業センター」が運営する酒田ケーブルテレビ(STV)は1983年に放送事業として認可され、ピーク時には100世帯程度が加入していたとみられるが、近年は通信局への報告を怠っており、最近の状況は不明だ。
ということなのだけど、山形新聞ではちょっと話が違っています。
酒田ケーブルテレビ、昨年末から放送停止 運営会社は解散扱い|山形新聞
『義務付けられている状況報告が滞り、昨年11月に同通信局が行った立ち入り検査では、加入世帯が80世帯程度と回答していた。』
河北の記事は11日付ですが山形新聞のwebの記事は13日付。山形新聞は12日に東北総合通信局に取材したらしく、同通信局が立ち入り検査を行ったという河北には無い事実が書かれています。改めて東北総合通信局のサイトを見ると、ちゃんと行政指導のプレスリリースが出ているではありませんか。
総務省|東北総合通信局|株式会社庄内社会教育事業センターに対する行政指導
ただ、この行政指導は『技術基準に適合しない設備であることを確認した』という技術的なもので、立ち入り検査をしたのは11月27日、行政指導の日付は12月26日。停電で放送ができなくなったのは12月29日です。
この行政指導には運営会社の代表取締役の実名が出ているのですが、この方が亡くなられたことになるのかな。たぶんこの方が一人で会社を切り盛りして放送は続けられていた、誰も手伝う人も無く。停電で送信不能になってからこの方が亡くなるまでの一か月にどんなドラマがあったのか、気になります。
たった一人でやっていたため

  • 社長の遺族の一人は「本人が1人でやっていた会社で、自分は関係ない。会社のことは何も分からない」
  • かつて大株主だったとみられる元取締役の親族は「元取締役の相続人の死亡時に専門家に遺産を調べてもらったが、株はなかった。自分も相続したつもりはない」

というわけで、事業を動かす人がいない。また

  • 停電の原因は不明で、復旧の見通しについて(雑居ビルの)所有者は河北新報社の取材に「答える必要はない」

よって、テレビを見られなくなった人だけがただただ困る。
現状では放送停止から1年となる今年12月末に放送業務取り消しとなる可能性があるのだけど、だとして206本あるという電柱の撤去をする人がいないという問題が出てくるようだ。
街中であるが故に受信障害で地デジが見られない人は今も確実にいるわけで、酒田市NHKか誰だか分からないけど(雑居ビルの行く末の問題もあるから市が何とかしてあげなければならないのかな)、必要な人に地デジの再送信が続けられるように手立てを考えてやってほしいと思います。


追記(2月16日筆):潟上市風力発電に関する河北新報の記事が2月14日に河北新報のwebに載ったようです。リンクを貼っておきます。
www.kahoku.co.jp
どうして遅れたのだろう・・・?