ここ最近のFM局予備免許について 2021秋

半年に一度の定例行事です。
自分なりにできる限り調べてはいますが誤りがあったり抜けているものがあったりしているかも知れません。

補助金交付決定

AMラジオ局のFM補完中継局の設置については「無線システム普及支援事業費等補助金(民放ラジオ難聴解消支援事業)」という制度があります。原資は放送局や携帯電話会社など無線局を持っている人たちが払っている電波利用料です。
総務省のサイトの「予算執行の情報」というページを見ればわかるはずなのですが、今夏の分はまだアップされていません。毎回のように書いている愚痴です。令和2年度の第3次の交付決定は今年2月10日付でした。このとき各地方の総合通信局のプレスリリースを眺めて載っていたのは静岡放送(東海総合通信局)だけでした。しかし、実は山口放送にも交付が決定されていました。今春の時点では私にはわからなかったのです。中国総合通信局はこの手のプレスリリースを出さないことがよくあるのです。静岡放送の御殿場のFM補完中継局はまだ開局していませんが、山口放送の豊田中継局は8月に開局しています。開局時のプレスリリースに『なお、本中継局の整備には、令和2年度無線システム普及支援事業費等補助金(民放ラジオ難聴解消支援事業)が交付される予定です。』と書かれています。
無線システム普及支援事業費等補助金にはFM補完中継局の設置以外にも種類があり、山口放送について公表しなかった中国総合通信局も電波遮へい対策事業のうち医療施設を対象とするものという分野で<中国地域の地域災害拠点病院の電波遮へい対策を支援>というプレスリリースは出しています。地上基幹放送等に関する耐災害性強化支援事業という分野では岩手県の奥州エフエムが親局及び演奏所の予備電源設備(無停電電源設備)の整備の目的で補助金を交付されることが決定しています。東京都の特定非営利活動法人多摩レイクサイドFMにも予備番組送出設備の整備という目的で補助金交付が決定しているのですが、関東総合通信局の発表は2月15日付と少し遅くなっています。
令和3年度の第1次の交付は5月12日付。
ひとつは福島県葛尾村に決定したのだけど、葛尾村と言えば昨年3月30日付で交付決定のプレスリリースが出ており、これに基づき昨年10月29日付で11か所の中継局に予備免許が付与されています。本免許は今年1月29日付で付与されているようですがそのプレスリリースはありません。実際の開局は3月1日だったようなのですが、中継局のある11か所は「広報かつらお」では避難所とし書かれておらず東北総合通信局のプレスリリースでは11か所の地名は伏せられています。なのに「でんぱでーた on web」では11か所が具体的に書かれています。その中には野行集会所もあります。しかしながら今回のプレスリリースにはこんな注釈があります。

(注)葛尾村野行地区に対する帰還困難区域の避難指示が令和4年に解除される方針が示されたことを受けて、同地区に帰還される方に向けてラジオ受信環境の整備を行うもの。

前回の補助金は帰還困難区域である野行地区には使われなかったのだろうか、という疑問が生じます。「でんぱでーた」のBBSには葛尾村の資料へのリンクがあったのだけど、それを見ると今年3月1日で工事は完了しているように見受けられます。この辺の細かいところが調べきれません。
もうひとつは鹿児島県奄美市。『あまみエフエムの放送中継局を奄美市に整備し、同市内の笠利南地区のラジオ難聴解消を実施。』ということです。これまで気が付かなかったのだけど旧・笠利町は旧・名瀬市から見ると龍郷町を挟んだ飛び地になっているんですね(龍郷町にはコミュニティFM局・エフエムたつごうがあり、当然旧・笠利町の南部に電波は届いています)。今でも笠利町にあまみエフエムの中継局はあるのですが1局では町全体をカバーできないということなのでしょう。
なお、葛尾村奄美市も補助割合は3分の2です。このほか「地上基幹放送等に関する耐災害性強化支援事業」の分野でRSK山陽放送山口放送補助金交付が決定しています。RSKは地デジ中継局の予備送信設備、山口放送はFM補完中継局の予備電源に関するもので、いずれも補助割合は3分の1です。しかし、これらの補助金はいずれも総務省のサイトの「予算執行の情報」のページにある第1四半期の補助金をまとめたExcelファイルに載っていません。私にはよくわかりません。
令和3年度の第2次の交付決定は8月27日付。
公表されているのは青森県つがる市。『コミュニティFM放送(五所川原エフエム)の中継局を整備(つがる市出来島地区)』ということです。つがる市五所川原市の西隣。その旧・木造町でも海沿いのようです。五所川原市からサービスエリアを拡大するということなのでしょうか。
「無線システム普及支援事業費等補助金(民放ラジオ難聴解消支援事業)」ではなく「放送ネットワーク整備支援事業費補助金(地上基幹放送ネットワーク整備事業)」という別の制度で7月8日付で静岡県伊東市補助金の交付が決定しています。東海総合通信局のプレスリリースによると、伊東市は『この補助金を活用してコミュニティ放送局に予備送信所及び緊急割込放送設備を整備し、地域住民(22,639世帯(注))への災害情報の迅速かつ確実な伝達手段を拡充する予定です。』と紹介されています。新たな中継局を設置するという意味ではないような気もしますが参考まで。

予備免許付与

本免許が下りる前には予備免許が降ります。今春以降予備免許が出ていることが各地方の総合通信局より発表されているものを列挙します。

  • 2021年6月3日
    • 株式会社茨城放送のFM補完中継局に予備免許

この茨城県つくば市の宝篋山(ほうきょうさん)中継局の開局とradikoの配信エリアを関東1都6県に拡大したことで『首都圏でも聴ける4つ目の県域FM局』になったらしいです(※茨城放送の公式サイトや「PR TIMES」のサイトに載っているプレスリリースでは『※誤解を招く表現があったため、記載内容を以下の通り訂正します。』ということでこの表現を取り下げたようですが、当初のプレスリリースを引用したブログなどでこの表現を見ることはできます。「ORICON NEWS」のサイトが見出しに掲げている『首都圏意識のラジオ局へ』というのが正しい見識なのだと思います)。
本免許のプレスリリースは関東総合通信局からは出ていませんが、茨城放送からは出ていて6月23日に本免許交付、7月1日開局とのことです。なお、FMつくば局の開局に伴い、同周波数だった守谷補完中継局が閉局しています(閉局日は6月30日になるのかな)。

塩尻コミュニティ放送」は愛称は「高ボッチ高原FM」で11月1日開局予定のようです。放送区域のpdfファイルを見て範囲が塩尻市域のほんの一部じゃねーかって不思議に思ったのですが、これで塩尻市の中心部はカバーできていて、市域のほとんどが郊外になるのかと驚くのでした。平成の大合併木曽郡楢川村を編入して面積がほぼ倍増したのね。

昭和村、葛尾村と同様に町が補助金を活用して整備し、日本放送協会(ラジオ第一)、株式会社ラジオ福島及び株式会社エフエム福島の番組を放送する公設公営型のFMラジオ中継局です。受信障害対策中継局が2局で、葛尾村と異なり2局の名称が明記されています。そういえば、昭和村の中継局の予備免許、本免許のプレスリリースのpdfファイルから受信障害対策中継局9局の名称が消えているんだけど…。

本免許付与

本免許のプレスリリースが出た例は以下の通りです。

ここで特筆すべきことは、『※周波数については、予備免許時の89.4MHzから変更しました。』という点です。予備免許時のpdfファイルも『[令和3年8月10日付の免許では、周波数を89.6MHzとしました]』と加筆されています。試験電波を発射してからどこかの局と混信でも生じたのでしょうかね。

一部地区とは豊田町及び菊川町周辺。補完放送局の局名はKRY豊田FM。放送区域は一部美祢局と重複しているが基本的に周囲の美祢、下関、豊浦、長門局の範囲で囲まれた空白部分。この14局目のFM補完局でFM山口どころか広島FMを抜いて日本で最も中継局の多い県域民放局となります(NHK-FMの山口局は16局。KRYと同じ14局のほかに錦(現・岩国市)と豊北(現・下関市)がある。なお、名前が異なるKRY周防大島局とNHK-FMの東和局は同じ場所にあるらしい)。

開局済みの局

プレスリリースは必ずしも公表されるとは限らないので、総務省電波利用ホームページにある無線局等情報検索でここ最近の免許付与について検索してみます。
免許の年月日が2021年3月31日以降であるものは6件ヒットしました。

放送局 中継局名*1 設置場所 周波数(MHz) 出力*2(W) 免許付与日 開局日
有限会社石垣コミュニティーエフエム
FMいしがきサンサンラジオ
川平(注1) 沖縄県石垣市 76.1 20(13.5) 令和3年3月31日 令和3年4月1日
玉取(伊原間)(注1) 沖縄県石垣市 76.1 20(240)
株式会社ほんじょうFM JOZZ3CZ-FM
ほんじょうエフエム
埼玉県本庄市 89.3 15 (12.5) 令和3年4月1日 令和3年4月14日
株式会社茨城放送
LuckyFM
つくば(宝篋山) 茨城県つくば市 88.1 100(420) 令和3年6月23日 令和3年7月1日
新庄コミュニティ放送株式会社
あすラジ
JOZZ2BT-FM
しんじょうエフエム
山形県新庄市 89.6 20(12.5) 令和3年8月10日 令和3年9月1日(注2)
山口放送株式会社 豊田FM 山口県下関市 86.4 20(56) 令和3年8月24日 令和3年8月24日

(注1)川平と玉取のどちらがどちらかは分からない。出力は同じだが最大実効輻射電力が全く違う。川平集落をカバーすればよい川平局より半島に沿って細長く電波を送りたい玉取局を比べれば電波の向きを絞りたい玉取局のほうが最大実効輻射電力が大きくなるような気がする。川平局はNHK-FMは山の上らしいがFMいしがきでは街中に建てたらしく送信所付近の住民が反対運動をしていたというニュースもあったようだ。なお、親局も今春と比べると出力は同じだが最大実効輻射電力が12.5Wから53Wにアップしている。2中継局設置に伴い電波を飛ばす向きを調整したのかもしれない。
(注2)Wikipediaによると、8月16日 - プレプレ開局としてサービス放送開始、8月23日 - プレ開局として時短放送開始、9月1日 - 本放送開始と3段階でじわじわとスタートしたらしい。JCBAのサイトの開局情報のページでは開局日を9月1日としている。

未開局の局

予備免許が下りていてまだ本免許が下りていない局で公表されているものは次の通りです。公表されていないものがある可能性はあります。末尾のSFMは受信障害対策中継局であることを表すものです。

放送局 中継局 設置場所 周波数(MHz) 出力(W) 予備免許付与日 開局予定
一般財団法人有本積善社
FMまいづる
空山(大浦) 舞鶴市字野原 77.5 10 令和3年2月18日 令和3年10月29日
加佐 舞鶴市字桑飼上 77.5 20
しおじりコミュニティ放送株式会社
高ボッチ高原FM
JOZZ4AU-FM
しおじりエフエム
長野県塩尻市 89.4 20 令和3年6月22日 令和3年11月1日
広野町 中央台SFM 福島県双葉郡広野町 89.0
90.2
78.6
0.1 令和3年9月16日 令和4年1月下旬
広洋台SFM

FMまいづるは設置した設備が作動しないと毎日新聞が6月に記事にしていたようです。局のサイトによると大浦中継局ではなく空山中継局という名称になったようです。
広野町の2局の周波数は上から日本放送協会(ラジオ第一)、株式会社ラジオ福島、株式会社エフエム福島葛尾村では福島局と同じ周波数でしたが広野町は原町局と同じ周波数にしたようです。

閉局

大阪府枚方市コミュニティFM局、FMひらかたが2022年2月28日に閉局すると10月25日に発表しました。市からの補助金が来年度からゼロにされることが理由だそうです。局のホームページで正直に書いています。開局24年の歴史がありラジオ番組の賞をいくつももらっていて制作能力もきちんとしているのでしょう。そんな局であってもコロナ禍の不況ということもあり助けてくれる人がいなかったというのは残念なことです。
こういうことを書くとだったらおめーが金出せばいいだろ的なことを言う人がいますが、私にもそんなお金は無いのです。他にこういう局が出なければいいなと思うだけです。

*1:コミュニティFMの親局については呼出符号と呼出名称

*2:カッコ内の数字は最大輻射電力