貸借対照表は左に資産、右に負債と資本(純資産)を並べ、企業の持っている資産価値を表現したものですが、当期と前期を見比べて株主資本のうちの利益剰余金の値がどれだけ増えているかを見れば、その企業がこの1年間にどれだけ利益を積み増したかが分かります。ただしそれは当期純利益とは一致しません。
在仙放送局の貸借対照表など 2023 - みむめもーどで調べた数字を使って遊んでみましょう。
当期利益剰余金 (a) |
前期利益剰余金 (b) |
剰余金の変動 (c)=(a)-(b) |
当期純利益 (d) |
差分 (e)=(d)-(c) |
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宮城テレビ放送 | 17,415,742 | 17,149,212 | 266,530 | 326,531 | 60,000 |
仙台放送 | 16,211,648 | 16,036,520 | 175,127 | 199,127 | 24,000 |
東北放送 | 9,303,141 | 9,744,562 | -441,421 | -388,921 | 52,500 |
東日本放送 | 7,414,000 | 7,502,000 | -88,000 | -48,000 | 40,000 |
エフエム仙台 | 1,495,111 | 1,467,321 | 27,790 | 32,789 | 5,000 |
※単位は千円。
※東日本放送は公表されている金額が百万円単位だったので「,000」をつけて単位をそろえています。
※仙台放送は逆にwebサイトに一の位まで公表されているので千円未満を切り捨て。
利益剰余金の前年度との差分がこの1年間で上がった利益のはずなのに、それは当期純利益とは一致しない。その差って何ですか?
東北放送の有価証券報告書には財務諸表が載っていますが、貸借対照表、損益計算書などいろいろある中のひとつに株主資本等変動計算書というものがあります。貸借対照表の中の株主資本の欄の数字がこの1年間の間にどう変化したかを表すものです。それを見ると『剰余金の配当』という項目があります。これが配当金の総額になります。また、この表から
(利益剰余金の変動)=(剰余金の配当)+(当期純損益)
(a)-(b)=ー(e)+(d)
ということが見えてきます。1年間で上がった純利益から株主配当を払ってその残りはまさに利益剰余金というわけです。
では配当って1株当たりいくらもらえるものなのでしょう。
配当金の総額 (e) |
資本金 (f) |
発行済み株式 (g) |
額面 (f)÷(g) |
1株当たり配当 (e)÷(g) |
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宮城テレビ放送 | 60,000 | 300,000 | 600,000 | 500 | 100 |
仙台放送 | 24,000 | 200,000 | 400,000 | 500 | 60 |
東北放送 | 52,500 | 750,000 | 150,000 | 5,000 | 350 |
東日本放送 | 40,000 | 1,000,000 | 2,000,000 | 500 | 20 |
エフエム仙台 | 5,000 | 500,000 | 10,000 | 50,000 | 500 |
※単位は配当原資と資本金については千円。
※発行済み株式数は東北放送以外はWikipediaによる。東北放送は有価証券報告書に書いてある。
※エフエム仙台と東北放送の資本金は減資前のもの。株券1枚当たりの資本金額を表す額面を計算するのに都合がよいため。
単純計算で1株当たりの配当が最も高いのはエフエム仙台ということになります。じゃあ一番儲かっている会社はエフエム仙台なのか? 一番儲かっているのは利益剰余金が最も多い会社、年度視聴率三冠王を13年連続継続中のミヤギテレビに決まっているではないですか。
株式会社というのはその運営に必要な資金を小分けにしたもの「株」を買ってもらう方式でお金を集めてそれを元手に商売をし利益を得たら配当という形で還元する、という理解であってますかね。宮城テレビ放送で言えば3億円のお金を細かく60万の株に分割して500円ずつにして、エフエム仙台であれば5億円のお金を1万の株に分割して5万円ずつにした。その細かく分けた1株の金額を株券の額面と呼ぶんでしたよね?
と思ってググってみたら、なんと額面という概念は2001年10月の商法改正で廃止になっていたそうで。それに株券という券を印刷して発行する制度も2006年に商法が会社法という法律に再編されたときに廃止になり、株券はただの紙切れになってしまいました。そういえば有限会社という会社の種類が廃止になって大会社ではなく公開会社でないなら監査役会や会計監査人の設置義務はない、それどころか取締役会すら設置義務はないことになったのもこのときからのようです。
私の古い頭では理解が追い付かない。宮城県の民間放送局はすべて未上場なので大っぴらに売り買いはされないのだけど、かつて株式市場で株の売り買いをする際には、会社によって株の分け方が異なるので額面5万円分を1単位として売り買いするという規定になっていたはずでした。宮城テレビ放送のように額面500円の会社は100株を1単位、エフエム仙台のように額面が5万円であれば1株で1単位。
その1単位という単位に揃えて考えると、1単位当たりの配当は多い順に
宮城テレビ放送:100株で10000円
仙台放送:100株で6000円
東北放送:10株で3500円(当期のみ、通常の年は3000円)
東日本放送:100株で2000円
エフエム仙台:1株で500円
ということになり、結局は利益剰余金の多い順。視聴率や売上高などのイメージからもそんなに逸脱したものではないかなという感じがします。
某企業は2年連続赤字なのにどうして配当が出ているんだという批判をする向きもあるかもしれません。赤字になったからといって無配転落となると人目が悪いというのが大きいのかな。また、今年11月の放送免許更新に際して事業計画や向こう5年間の収支見込を総務省に提出しなければならないのですが、赤字が続きますと書いて提出するわけにはいかないでしょうから、たまたま新型コロナとかウクライナ戦争とかの外的要因で一時的に出稿が落ち込んでいるだけでじきに元に戻ります配当を継続できる程度にやっていけます大丈夫です、とアピールする必要はあるのではないかと。その辺は憶測と妄想のお話になりますのでこの辺でおひらきにしませう。