東北放送、1億円に減資

9月の最後の日。河北新報をテレビ欄のほうからめくると「自民総裁に岸田氏」ということで東北各地の民の声や識者の代表として「ザ・ニュースペーパー」の方と元「NEWS ZERO」キャスターからの期待の言葉が載っています。下には記事四段の大きさであずみーとかまきり、もとい安住紳一郎さんと香川照之さんの写真が大きく出ていてぴったんk、もとい新番組「THE TIME,」明日あさスタートの広告。その横には小さく「ウォッチン!みやぎ」。「あさチャン」が無くなっても「ウォッチン!みやぎ」はこれまで通り継続されるようです。
そのカラー広告の横。涌谷町出身の声優さんが純米大吟醸酒をプロデュースした話題? いや、記事ではなくて。東北放送株式会社が公告を出していました。広告とは違います、社としてのお知らせすべきことの公告です。2つあります。

  基準日設定につき通知公告
 当社は、令和3年10月15日を基準日と定め、同日最終の株主名簿に記載または記録された株主をもって、令和3年12月1日開催予定の株主総会における議決権を行使できる株主と定めましたので公告します。
  令和3年9月30日
   宮城県仙台市太白区八木山香澄町二十六番一号
    東北放送株式会社
    代表取締役社長 一力敦彦

  資本金の額の減少公告
 当社は、資本金の額を6億5千万円減少し1億円とすることにいたしました。
 株主総会の決議は令和3年12月1日に予定しており、同日を効力発生日とする予定です。
 この決定に対し異議のある債権者は、本公告掲載の翌日から一箇月以内にお申し出ください。
 なお、最終貸借対照表の開示状況は次のとおりです。
 金融商品取引法による有価証券報告書提出済。
  令和3年9月30日
   宮城県仙台市太白区八木山香澄町二十六番一号
    東北放送株式会社
    代表取締役社長 一力敦彦

以上河北新報9月30日付朝刊27面より。
経済面(9面)にも記事として出ています。河北新報のニュースサイトには載っていないので紙面から書き写し。

1億円に減資 東北放送

 東北放送仙台市)29日の取締役会で、資本金を現在の7億5千万円から1億円に減資することを決めた。12月1日の臨時株主総会で正式決定する。
 同社によると、企業規模に合わせた財務内容の健全性維持が目的で、株主数や純資産額に変更はない。減資分は全額を資本剰余金に振り替える。

減資とは資本金を減らすこと。これには会社が抱える負債を整理するというイメージがあります。例えば拙blogでは以前こんな話題に触れたことがありました。

そのとき先生からこんなコメントをいただきました。あっ、税理士の先生ではありません、たぶん。事ある毎に私に指導してくださる先生がいらっしゃいまして。彼曰く『下書きした文』とのことでしたが本稿に関係ある部分だけ抜粋して再掲します。

朝塩  2021-06-11 18:25:43

減資を行うとバランスシートの見栄えが良くなります。正味の財産が減るわけではありません。財務体質を改善しようとした経営者の意思表明くらいだと思います。仙台市の法人市民税も減りますが、従業員数が少ないので年額41→16万円とさほど大きな影響はないし、公告や登記の費用で簡単に吹き飛ぶくらいです。資本金が1億円を切ると中小企業への道が開けていろいろメリットも出てきます(完全子会社ではないので)。

法人税法においては中小法人とは資本金が1億円以下の法人と定義されているのだそうで、CI(コーポレートアイデンティティ)で社の略称のロゴを大文字のTBCから小文字のtbcに変えた東北放送は税制上も大企業から中小企業に変わることになります。これにより税制上の優遇措置が受けられるのだそうです。この度ググってみたら「♪税のことなら辻・本郷~」でおなじみ辻・本郷税理士法人のサイトの解説記事が引っ掛かってくれたのでリンクを貼っておきます。
無償減資で税務メリット?!中小企業化する上場企業 | 辻・本郷 税理士法人
最新の有価証券報告書については拙blogで取り上げ、先生に様々な観点から解説をいただいたわけですが、

今回の東北放送株式会社の決算が例年と大きく異なる点に、NTTドコモがNTTの完全子会社となったために保有していたドコモ株が換金されたということがあります(経営が傾いたからドコモ株を売却したのではありません)。東北放送はwebサイトの会社概要のページで馬鹿正直に『経常損失 5億2,315万円』と赤字決算だったことを公表しているのですが、ドコモ株の売却収入は19億5千万円もありますので純利益は1億0582万円の黒字になります。
んっ、計算が合わない? 経常損失に株売却などの特別利益、社屋建て替えなどの特別損失を足し引きして東北放送単体の「税引前当期純利益」はおよそ7億3070万円。 なのに「法人税等合計」として6億2488万円ほどが差し引かれ「当期純利益」は1億ほどしか残らないのです。税効果会計とか繰延税金資産とか私にはちんぷんかんぷんなのですが、どうせ決算を締めた後に税金に取られるのだから最初から取られる額として引いておこうということなのかな。法定実効税率は30.5%なのに税効果会計を適用すると85.5%の税率が掛かったと同じことになったようです。
こういうことになってしまったのも資本金が1億円を超える大企業だからだったということなんですかね。資本金1億円の中小企業だったらそこまでの税率にはなっていなかったと。私は経理についてはズブの素人なので書いていることがトンチンカンだったら指摘してもらえるとありがたいです。

さて、東北放送のwebサイトを見ると、あれっ? ラジオのタイムテーブルのpdfファイルがうpされてる。

改編初日の9月27日にはなかったはず。日々確認してたはずなんだけどな。28日か29日にアップされたんだろうな。そんでもってトップページには『【お知らせ】臨時株主総会の開催・資本金の額の減少』と、会社概要のプレスリリースのページへのリンクが貼ってあります。9月29日付で『報道資料20210929 臨時株主総会の開催・減資に関するお知らせ』というpdfファイルがアップされていました。

『臨時株主総会招集のための基準日設定及び臨時株主総会の開催 並びに資本金の額の減少(減資)に関するお知らせ』という長いタイトルが付いています。一部抜粋します。

3.減資について
(1)減資の目的
当社の企業規模等に鑑み、適切な税制の適用により財務内容の健全性を維持することを目的に、会社法第447条第1項の規定に基づいて資本金の額の減少を行うものです。
なお、本件による発行済み株式総数および純資産額に変更はなく、株主の皆様の所有株式数や1株あたり純資産額に影響を与えることはありません。

(4)今後の見通し
本件は、払戻しを行わない無償減資とし、純資産の部における勘定科目間の振替処理であり、純資産の変動はなく、当社業績に与える影響はありません。なお、本件は、本臨時株主総会において承認可決されることを条件としております。

貸借対照表の純資産の部の部分で『資本金 750,000』と書かれていたのが資本金100,000と資本剰余金650,000に書き替わるだけですよということらしいです(実際の貸借対照表では『資本剰余金 550』、以前から資本準備金として55万円が計上されています)。
電子化の世の中では株券という券はもはや存在しないわけですが、昔ながらの考え方で言うと1枚5000円の券が10万株あって資本金5億円ということだったのだろうと思うのです。有価証券報告書に1974年10月1日付で『(注)有償・株主割当1:0.5 発行価格5,000円 資本組入額5,000円』と書いてあるのは、それまでの株主に出資金の半額の分を追加出資してもらって株券が15万株、資本金が7億5千万円になったという解釈でよいのかな。まぁ長い間資本金7億5千万円でやって来たわけです。
今回、発行済み株式総数や株主の皆様の所有株式数に変更はないということなのだけど、例えば筆頭株主河北新報社は現在1万5千株、全体の10%を持っているわけですが資本金の10%、7500万円を出資しているということなんですよね。これが減資されると出資額は1億円の10%で1000万円という扱いになるということなのかな。で1万5千株という数は変わらないのだから1株の額面は1000万÷1万5千≒666円66銭? 株券という券はもう無いのだから意味のない計算なのかもしれないのだけど、なんか割り切れないものがあります。

ところで、余計なお世話ですが他局の資本金も調べておきましょう。(※放送局の並びは開局順)

おまい、何処を調べてるんだ? やり直し。

必ずしも資本金と売上高、経常利益は比例しないわけですが、それにしても放送局は資本金が大きい。放送設備を整えないと番組が作れないし県内各地に送信アンテナを建てておかないと開局しても見てもらえないしで莫大な初期投資が必要だからなのかもしれないのだけど。岩手朝日テレビだけ資本金が小さいのであれっと思ってググってみたら7月に減資を発表したばっかし。そして岩手だけではなく愛媛朝日テレビも今年、資本金を40億円!から1億円に減資、愛媛県では同じ平成新局であるあいテレビも昨年7月に同じく40億円から1億円に減資したようです。愛媛の2局は貸借対照表に新社屋建設積立金という項目があるからその目的もあるのかな。開局45周年を機に2回目の社屋移転を果たした東日本放送は名実ともに大企業なのかもしれない。