想い出の渚

もうradikoタイムフリーから消えたのですが、シャレオツな番組エンボヤことTBCラジオ「en∞Voyage」の1月22日(水)の「希望音楽会」にて、ザ・ワイルドワンズの「想い出の渚」が掛かりました。
東北放送ではこの曲は特別な事情が無い限り掛けない方がよい曲とされていたはずです。
誰がそんなこと言ったんだ? 私もその人を探して何故ダメなのか訊いてみたい。
拙blogが「はてなダイアリー」にあったころに書いたものは基本的に非表示にしているのだけど、2015年3月に「宮川賢のまつぼっくり王国」を聴いた感想としてこのことを取り上げています。当時書いたものを再掲してみます。

2015-03-24

思い出の渚

昨日のつづき、「宮川賢のまつぼっくり王国」(東北放送3月22日深夜放送分)のオープニングトークの件。被災地のことをおもんぱかる(おもんばかる)気持ちが強すぎる宮川さんは考えすぎだということを昨日付のところに書きました。今日はその話に関連して東北放送に話の矛先を向けます。
宮川さんは去年の夏だったかな、まつぼっくりの番組の中でザ・ワイルドワンズの「思い出の渚」を掛けたらしいのです。ただ、被災地のことを考えるとこんな曲を掛けてよかったのだろうかと思ってしまい、東北放送の人に聞いてみたら「特別の事情が無ければ掛けないほうがいいと思います」と言われた、って語っていたと思うんですけど。
KBS京都ではまだ放送されていないし誰かニコニコ動画に音声をアップしてくださる方もいらっしゃるようなので、そこで正確な発言を確認してから論じるべきかもしれないのだけど、「思い出の渚」って被災者の傷ついた心に塩を塗るような歌詞でしたっけ?
かつて地元に渚ちゃんというジュニアアイドルがいたっけ、東京に行って女子アナになっちゃったなぁ、と振り返るわけでは無い。元カノとのひと夏の遠い思い出を懐かしむ歌詞だと私は解釈しています。しかし津波に家族や知り合いをさらわれた人が聴くと、『波に向かって叫んでみてももう帰らないあの夏の日』という歌詞は「おだづな津波!」と叫んでみたところで亡くなった人、行方不明のままの人は帰ってくることはない、と変換されてしまい悲しみをより深いものへと追いやっていくのでしょうか。
けっこう無理して考えました。実際のところはどういう気持ちになるもんなんでしょうね。
最近南三陸町防災庁舎を保存することの是非についてのニュースを見ていて思うんです。あの場所で家族は死んだ、そんな場所を見たくはない、今すぐにでも解体してほしい、あんな建物が立っていると思うだけで私は苦しみ続けなければならない、という解体派の人の声を聞いて、どうしてそこまで激しく苦しまなければならないのだろうって。親戚に津波の犠牲者が出なかった私には、あの庁舎を解体しなければ苦しみから解放されないと訴える人の心を理解することはできないのだろうって。
さて、宮川さんの悩みに回答した東北放送の人って誰なんでしょう。誰であったとしても被災者に寄り添う東北放送ですから被災者が聴いたら嫌な気持ちになる楽曲にも敏感なのかもしれません。それってどんな曲なんでしょう。
海に関連した曲は津波を思い起こさせるということなのでしょうか。そこでひらめいたのが年末に放送される「七十七スターライトシンフォニー」。昨年は加山雄三さんでした。♪海よ〜俺の海よ〜。「海、その愛」なんて放送されたのだろうか。検索してみたら放送されていたようです。だから海に関する曲が一律にダメなわけではない。すると自粛すべきと判断するのなら歌詞の内容をどう判断するかということになるのでしょう。
「思い出の渚」なんて有名な曲だから去年の夏にもどこかの番組で掛けてるんじゃないのかと思って各ワイド番組のオンエアリストのページを探してみたのだけど、おととし2013年4月に「歌のない歌謡曲」で掛けている程度のようだ。あれは歌詞が無いから問題ない。「colors」(希望音楽会)や「ラジオな気分」は昨年9月以降の分しか保存されていない。夏の歌だからリクエストが来るとすれば夏だろうと思ったのだが。「イイネ!ミュージックラブ」では掛かったことがない。「Music☆Twinkle」で掛けているのは震災が起こるずっと前の2004年7月。たぶんTBCラジオでは昨年の夏に「思い出の渚」は掛けなかったのかな。
でもでもでも、東北放送と言えばだよ、就任し立てで気が大きくなって宮城県庁で宮城県知事を恫喝し「書いたらその社は終わり」と言った大臣の声をその夜の定時ニュースで放送した会社であり、なおかつその日の深夜の放送休止時間のラジオの試験電波でサザンオールスターズの「TSUNAMI」を掛けた放送局ではないですか。楽曲のTSUNAMIはローマ字だから漢字の津波とは別物なのかもしれないけど、試験電波は正式な放送番組ではないから許されるのかもしれないのだけど。そんな放送局に掛けていい曲と掛けて悪い曲の区別を言う資格はあるのだろうか? それとも震災から4年経つからこそ掛けていい曲と掛けないほうがいい曲というものがあるのだろうか。
TBCラジオで掛からないのなら、最後にニコニコ動画でみつけた懐かしの映像をご覧いただきながらお別れしましょう、「思い出の渚」。ザ・ハンダース

この文章、漢字間違ってます。正しくは「想い出の渚」だそうです。
こんなことを書いた翌月の2015年4月、この曲を作曲された加瀬邦彦さんが亡くなられた際にTBCラジオ「colors」で追悼の意味を込めて「想い出の渚」を掛けています。私は『事情があれば掛けるのね』という皮肉ったタイトルのエントリを上げています。
ただ、今回の希望音楽会のリクエストは、特別な事情があるという雰囲気の無い、なんとなく聞きたい気分だからリクエストしましたみたいな感じでした。希望音楽会はリスナーの希望する音楽を掛ける番組だから希望が来れば応えるわけですが、それが「特別の事情が無ければ掛けないほうがいい」曲であればふつう掛けないですよね。でも掛けた。ということは、「想い出の渚」は「特別の事情が無ければ掛けないほうがいい」曲ではなくなったと考えてよいのだろうか。それとも「特別の事情が無ければ掛けないほうがいい」という考えを持っていた人がスタッフから外れたので別に掛けたっていいんじゃないと思って掛けちゃったのか。どちらなんだろう。
なお、そのタイトルから掛けるのを自粛すべきと思われがちなサザンオールスターズの「TSUNAMI」はTBCラジオのサイトを検索したところ、「ランチボックス-L」のオンエアリストの2018年6月27日(水)のところに載っていました。この日はサザン特集だったみたいです。また「en∞Voyage」でもON AIR SONGリストの2019年8月12日(月)のところに載っていました。どうやら山下達郎VS.サザン特集を組んだようです。「TSUNAMI」はTBCラジオでは禁忌ではありません。
一方、「想い出の渚」は歌詞が無い「歌のない歌謡曲」で2017年8月1日(火)に流れたようです。「Goodモーニング」のOAリストに載っています。どうでもいいことかもしれないけど、番組ごとに「オンエアリスト」の表記がバラバラ。
最後に、「想い出の渚」のようつべの動画をつけておきます。

思い出の渚 ザ・ワイルドワンズ