半年に一度の定例行事です。
自分なりにできる限り調べてはいますが誤りがあったり抜けているものがあったりしているかも知れません。
補助金交付決定
総務省のサイトの「予算執行の情報」というページで「補助金等交付決定」というEXCELファイルをダウンロードして「民放ラジオ難聴解消支援事業」という事業を探します。補助金の名称としては「無線システム普及支援事業費等補助金」で、その事業の対象がいくつかあるうちの一つに「民放ラジオ難聴解消支援事業」があります。
令和3年度第4四半期のファイルをダウンロードすると、令和3年度の第3次の交付決定が2月17日付で出ていることが分かります。
・株式会社新潟放送
・株式会社アイビーシー岩手放送(2件)
・魚沼市
このうち岩手放送の2件については東北総合通信局から2月18日付でプレスリリースが出ていますが、新潟放送と新潟県魚沼市については信越総合通信局からプレスリリースは出ていません。前回(新潟放送と長野県東御市)も出ていないのでそういう方針なのでしょう。
「無線システム普及支援事業費等補助金」の適用される事業のひとつに「地上基幹放送等に関する耐災害性強化支援事業」があります。地上基幹放送等の放送局の停電対策や予備設備の整備を行う地方公共団体、民間テレビ・ラジオ放送事業者等に対し、その整備費用を支援する事業だそうです。同日に水戸コミュニティ放送株式会社に出ています。予備中継回線(無線)の整備に対するもので補助率は3分の1です。今年度はこの事業で送信所の予備電源を整備する放送局が増えています。
一方、令和4年度第1四半期のファイルをダウンロードしてみると、「高度無線環境整備推進事業」など別の事業については載っているのですが、「地上基幹放送等に関する耐災害性強化支援事業」や「民放ラジオ難聴解消支援事業」は載っていません。しかしながら各地方総合通信局のプレスリリースはいくつか出ています。さいわい「民放ラジオ難聴解消支援事業」は4件だそうで、4件とも発表されています。
・静岡放送株式会社が富士市、富士宮市(市街エリアを含む。)及びその周辺地域におけるラジオの受信状況の改善を目的として、FM中継局を整備するのに対して5月31日付で
・愛知県瀬戸市が難聴地域における受信状況を改善し、防災情報伝達手段として活用することを目的として、コミュニティ放送局(株式会社尾張東部放送)の中継局を整備するのに対して6月2日付で
なお、瀬戸市についてはこれとは別に、コミュニティ放送局に緊急割込放送設備を整備するのに対して「放送ネットワーク整備支援事業費補助金(地上基幹放送ネットワーク整備事業)」という別の補助金が5月31日付で出ています。静岡放送と瀬戸市の中継局はほぼ同じ事業費で補助割合は3分の2、緊急割込放送設備の整備は中継局とは事業費が別で補助割合は2分の1となっています。
霧島市が横川地区にFMきりしまの放送を再送信する受信障害対策中継局を整備するために、補助割合は3分の2です。
JR肥薩線で隼人駅から7駅という中心部(旧・国分市、旧・隼人町)からかなり北に離れたところに旧・横川町はあります。
余談ですが再送信は法律用語として再放送と呼ぶことになっていますが、今回のプレスリリースでは再送信と書かれています。
- 2022年5月31日
- 株式会社FMやんばるに対し「民放ラジオ難聴解消支援事業」に係る補助金の交付を決定
このプレスリリースのおかげで補助金交付が全4件だと分かりました。ただ、これには補助金額(結構かかっている)は分かっても事業内容が分かりません。「HUB沖縄」というニュースサイトに記事が出ているという情報を仕入れたのでリンクを貼ります。
FMやんばる聴取エリア拡大 地域局だからできる防災情報提供へ
(1ページ目より)
聴取エリア拡大は、もともと使っていた沖縄県立北部病院内の無線塔に加えて、市中央部の多野岳にある沖縄県が管理する無線塔を追加で利用することで実現した。その際、現行の周波数では他の無線と競合してしまうため、周波数を変更することとなった。
(2ページ目より)
今回のエリア拡大は、地域からのニーズも高かった。「地域の命をラジオで守る」をキャッチフレーズに実現を目指して2020年にクラウドファンディングを実施。目標金額を600万円に設定していたが、それを大きく上回る800万円以上の支援が542人から寄せられた。名護市民だけではなく、名護にルーツのある人や名護市出身者からも広く支援してもらったという。新城社長は「7日の特番ではまずお礼を述べたいです」と感謝する。
結果として2本の無線塔の両方とも周波数を変更しなければならなくなり、機材変更などの設備費用がかさんで「実際は1300万円ぐらいかかりました」と苦笑するものの「でも、やらない訳にはいかないですし」と続行に躊躇はなかった。
クラウドファンディング終了後、2年をかけて国、県、市の各所と調整して、ついに総務省からの許可を受けた。取材日の午前、時間と労力をかけた末にもらってきたばかりだという許可状を手にした新城社長の顔には、隠し切れない笑顔がにじみ出ていた。
局のサイトにはクラウドファンディングの収支報告とお金を集めてから2年間の事業の流れについてまとめられていました。FMやんばるクラウドファンディング 「地域の命をラジオで守る!~みんなで建てる電波塔で聴取エリアを拡大したい~」事業・収支報告について – FMやんばる
こんなこともクラウドファンディングでやらなければならないのかと驚いたりもするのですが、中継局を一つ増やすにもこれだけの労力がかかるのかというところにも発見や学びがありました。今回補助金が交付されたことで資金面ではひと息つけたのでしょうか。
予備免許付与
本免許が下りる前には予備免許が降ります。予備免許が出ていることが各地方の総合通信局より発表されているのは今期は3件4局。
10月1日に開局したのですが、この局の珍しいところは関東学院大学経済学部のゼミが発案して8年かけて運営会社の設立にこぎつけたこと。大学が運営する放送局ではなくあくまで地域の活性化のために起業したというものであり、いわゆる「きらら方式」で運営しているようです。共同代表になっている二人の名前をググるとひとりは地元のIT企業の経営者のようですがもうひとりは関東学院大学の学生で、ググるとインタビュー記事がいくつか出てきます。この方は卒業後経営に専念するのだろうか、それともゼミの後輩が共同代表を継ぐのだろうか。大きなお世話ですね。
- 2022年8月25日
- 株式会社アイビーシー岩手放送のFM補完中継局2局に予備免許 - 釜石市、宮古市及び山田町などで受信状況が改善 -
予備免許の概要のpdfでは釜石FM中継局の設置場所は釜石市ではなく住田町となっています。NHK盛岡放送局が出している「NHK岩手県ラジオMAP」だと釜石FM中継局は釜石市と遠野市の境の笛吹峠にあるっぽく見えますが、送信所に詳しいサイト「でんぱでーた」ではNHK-FMやFM岩手の釜石中継局は気仙郡住田町の箱根峠となっています。Googleマップで箱根峠を探すと、いずれの中継局も釜石市甲子町にあるとなっています。釜石市と住田町の境なのですが。
今回の釜石、宮古の2局で岩手放送のFM補完中継局は10局の大台に乗りますが、盛岡局以外は90.0MHzより低い周波数を使っているのが特徴的です。
ところで、宮古とこの次に紹介する糸魚川のFM補完中継局に関しては総務省の本省(情報流通行政局)から5月31日付で『FM補完中継局の免許申請の受付』というのが出ていました(受付期間は6月1日から7月1日)。それぞれ岩手放送と新潟放送が応募したのでしょうね。『平成26年総務省告示第183号』が根拠となっていて、盛岡局を指しているような気がする『盛岡市、宮古市、花巻市、北上市、奥州市、岩手郡、紫波郡、和賀郡および胆沢郡 85MHz以上88MHz以下 20W超』と山田町が属する『下閉伊郡 86MHz以上89.9MHz以下 20W超』というのは載っているのですが、これをもって宮古市と下閉伊郡山田町を放送区域とする中継局は公示が必要となるのでしょうか。そもそもどうしてこんな規定が存在するのかが私にはわかりません。
2月8日付で南魚沼市の大和FMに予備免許が出たのに続いて今回は糸魚川FMです。同じ94.8MHz、100Wですが遠く離れているので問題ないでしょう。既設の高田FM(94.8MHz、30W)とも放送区域はかぶらないようです。上越市と糸魚川市の間も山なのね。開局予定は大和FMと同じ令和4年度となっていますので、来年春にできるのでしょうか。
ところで新潟放送といえば、来年4月1日付で認定放送持株会社制に移行する予定なのだそうで既に7月29日に発表されていたのですが、10月7日付で関連する別のpdfファイルが出ていたので読んでみると、来年4月1日付で持株会社「株式会社BSNメディアホールディングス」の下に情報システム会社「BSNアイネット」とそのグループ、放送会社の「新潟放送」といった体制図の末尾に「酒田エフエム放送」が追加されていました。『※2022 年7月に酒田エフエム放送(株)(本社:山形県酒田市)の株式を一部取得しました。』と注釈が付いていました。地方局が持株会社化する際には他県のコミュニティFM局を傘下に持たなければならない内規でもあるのでしょうか。
本免許付与
ケーブルテレビ局の五島テレビが運営するようです。そういえばケーブルテレビ局がコミュニティFMを設置してもよいことになったとかいう情報があったような気がしますが、それより前の話です。九州総合通信局のプレスリリースでは放送区域は福江島だけになっていますが、局のサイトでは『五島市全域でどなたでも聴けます』としています。
本免許のプレスリリースが出た例は今回は1例だけです。なのでおまけ。
2019年の「練馬まつり」の記録が残っているのですが、その際はイベント放送局としての免許で87.1MHz、5Wでした。免許人は練馬まつり推進協議会、コールサインはJOYZ3AM-FM(ねりままつりイベントエフエム)でした。
今回2022年は「実験試験局」というカテゴリーの免許で77.1MHz、45W(最大実効輻射電力7.7W)だそうです。免許人は練馬区で、JOなんとかというコールサインはありません(呼出名称は「ねりまくりんさいじっけん」です)。
ポイントはプレスリリースのタイトルにもある通り、77.1という数字。77.1といったら宮城県ではエフエム仙台の周波数ですが関東では放送大学のラジオの周波数でした。しかし放送大学は全国的にBSデジタル放送に一本化されたため77.1が空き周波数になりました。そこで、何かあったときのために関東で臨時災害放送局を建てるときは77.1を使おうということになったようです。実は9月1日の「第43回九都県市合同防災訓練」において千葉市で77.1MHzの電波を出しているそうなのですが、今回放送大学の地上波ラジオ放送が無くなってから初めて都内で77.1MHzの電波が出る(出た)ことになります。
開局済みの局
総務省電波利用ホームページにある無線局等情報検索でここ最近の免許付与について検索してみますと、免許の年月日が2022年4月1日以降であるものは5件ヒットしました。
放送局 | 中継局名*1 | 設置場所 | 周波数(MHz) | 出力*2(W) | 免許付与日 | 開局日 |
---|---|---|---|---|---|---|
株式会社五島テレビ gotoFM |
ごとうエフエム JOZZ0CS-FM |
五島市岐宿町中嶽 | 76.2 | 20(23) | 令4.5.17 | 令和4年5月18日 |
株式会社五所川原エフエム G.Radio |
出来島 | 青森県つがる市 | 76.7 | 0.1(0.04) | 令4.6.1 | ? |
株式会社エフエムなとり なとらじ801 |
エフエムなとり JOZZ2BL-FM |
宮城県名取市 | 80.1 | 20(32) | 令4.7.1 | (注3) |
株式会社FMやんばる | 多野岳 | 沖縄県名護市 | 87.7 (注1) |
20(23.6) | 令4.8.4 | 令和4年8月7日 |
株式会社金沢シーサイドFM | JOZZ3DAーFM かなざわしーさいどエフエム |
神奈川県横浜市金沢区 | 85.5 | 10(17.5) | 令4.9.27 (注2) |
令和4年10月1日 |
(注1)FMやんばるの親局の周波数は77.6MHzだったが、多野岳中継局設置に伴い87.7MHzに変更された。87.7にちなんで8月7日の夜7時からだったそうだ。
(注2)「無線局免許状等情報」では免許の有効期間が他のコミュニティFM局(令和7年10月31日)と異なる令和5年10月31日となっているのだけど、これは正しいのだろうか?
(注3)運営会社がNPO法人から株式会社に変更になったのだが、そういえば免許を継承する際には総合通信局からプレスリリースが出るはずで、今回は出ていない。局のサイトを見ると開局日が7月1日と明記されており、免許を継承したのではなく株式会社が新たに免許を取得したという形式をとったらしい。NPO法人によるこれまでの局は6月30日で廃局という扱いになったのだろうか。なお、コールサインに変更はない。
廃局と言えば…
未開局の局
予備免許が下りていてまだ本免許が下りていない局で公表されているものは次の通りです。公表されていないものがある可能性はあります。
放送局 | 中継局 | 設置場所 | 周波数(MHz) | 出力(W)*3 | 予備免許付与日 | 開局予定 |
---|---|---|---|---|---|---|
酒田エフエム放送株式会社 ハーバーRADIO |
八幡 | 山形県酒田市観音寺地区 | 76.1 | 20(25) | 令和4年2月9日 | 令和4年3月18日 |
↑ | 松山南 | 山形県酒田市大川渡地区 | 76.1 | 20(8.0) | ↑ | ↑ |
日本放送協会 | NHK柏尾山補完R1 | 高知県高知市 | 92.8 | 100(160) | 令和4年2月14日 | 令和5年3月頃 |
株式会社新潟放送 | BSN大和FM | 新潟県南魚沼市 | 94.8 | 100 | 令和4年2月8日 | 令和4年度 |
↑ | BSN糸魚川FM | 新潟県南糸魚川市 | 94.8 | 100 | 令和4年9月15日 | 令和4年度 |
株式会社アイビーシー岩手放送 | IBC釜石FM | 岩手県住田町 | 88.5 | 100 | 令和4年8月25日 | 令和4年12月 |
↑ | IBC宮古FM | 岩手県宮古市 | 87.2 | 100 | ↑ | ↑ |
酒田エフエムに関しては局のwebサイトに7月29日付で『エリア拡大と設備点検工事のため8月1日(月)13時から15時までの間に数回、それぞれ10~20分程度、放送を一時停止します。』というお知らせが出ていたので、8月の時点ではまだ開局していません。10月になっても何の情報も無く、開局予定からかなり延びています。