ここ最近のFM局予備免許について 2020秋

定点観測の第3弾は拙blogの年中行事として春と秋にやっている作業なのですが、これをやるきっかけとなった「ラジオ番組表」(三才ブックス刊)の正誤表づくりをやめてしまったので、やる意味は無いと言われれば無いです。ただ、今秋は11月1日に全国のコミュニティFM局の免許一斉更新が控えています。これを機に閉局する局も現れたりしていますので、意味はあるのかもしれません。今秋の「ラジオ番組表」はいつもどおり10月27日(火)に出るそうですが、たぶん間に合わなかったところもあるでしょうし。
自分なりにできる限り調べてはいますが誤りがあったり抜けているもがあったりしているかも知れません。

補助金交付済み

AMラジオ局のFM補完中継局の設置については「無線システム普及支援事業費等補助金(民放ラジオ難聴解消支援事業)」という制度があります。
5月1日付で第1次の交付決定のプレスリリースが各地方総合通信局から出ているのですが、エフエム仙台などの「地上基幹放送等に関する耐災害性強化支援事業」に関するものなど他の事業については載っているのですが「民放ラジオ難聴解消支援事業」は無いようです。
第2次の交付決定は8月17日付で出たようなのですが、そのうち「民放ラジオ難聴解消支援事業」に関するものは東北総合通信局から出た1件だけ。

3月に補助金が出た双葉郡葛尾村ともども1月に免許が出た大沼郡昭和村と同じタイプ(NHK第一ラジオ福島ふくしまFMの3波の再送信)だと思われます。補助割合は3分の2。金額が他の2町村より少ないので中継局数は少ないのかも。大きなお世話だけど、広野町の北隣の双葉郡楢葉町には広野町の南隣・いわき市コミュニティFM「SEA WAVE FMいわき」とNHK-FMの中継局があります。
もしかするとプレスリリースを出さないだけで補助金が交付されている事案があるのかもしれないのですが、総務省のサイトの「予算執行の情報」のページにはまだ第二四半期(7月から9月)のファイルがアップされていないのでウラが取れません。

予備免許付与

本免許が下りる前には予備免許が降ります。昨秋以降予備免許が出ていることが各地方の総合通信局より発表されているものを列挙します(予備免許のプレスリリースを出さないことにしているところもあります)。

本免許付与

本免許のプレスリリースが出た例は以下の通りです。

  • 2020年4月17日
    • あまくさシティエフエムの放送エリアが拡大
  • 2020年4月27日
  • 2020年7月17日
    • 佐賀県鳥栖地区で長崎放送のFM補完放送が聴取可能に -AM放送の難聴解消のためのFM補完中継局に免許-
  • 2020年8月25日
  • 2020年8月28日
    • エフエム熱海湯河原の下多賀中継局に免許 <熱海市のFMラジオの受信状態を改善>

開局済みの局

プレスリリースは必ずしも公表されるとは限らないので、総務省電波利用ホームページにある無線局等情報検索でここ最近の免許付与について検索してみます。
免許の年月日が2020年3月20日以降であるものは12件ヒットしました。

放送局 設置場所 中継局名 周波数(MHz) 出力(W) 免許付与日 開局日
株式会社エフエム滋賀 滋賀県長浜市 長浜 82.2 100 令2.3.26 令2.4.1
株式会社FM鳥取 鳥取県鳥取市矢矯 毛無山 82.5 20(72) 令2.3.30 令2.4.1
鳥取県鳥取市用瀬町別府 小倉山 82.5 20(21) 令2.3.30
日本放送協会 鹿児島県西之表市大字住吉字廻峯山(まわりみねやま) 種子島R1 79.3 1k 令2.4.7 令2.4.13
天草ケーブルネットワーク株式会社
みつばちラジオ
熊本県天草市深海町 深海 88.8 5 令2.4.17
下平 1
浅海 1
株式会社エフエムくらしき 岡山県倉敷市真備町 真備FM 82.8 10(19) 令2.4.27 令2.5.1
北上ケーブルテレビ株式会社
きたかみE&Be*1エフエム
岩手県北上市 臥牛(ふしうし) 88.8 10(0.5)*2 令2.6.26 令2.7.22*3
長崎放送株式会社 佐賀県鳥栖市 鳥栖FM 92.1 20(110) 令2.7.17 令2.8.1
青森放送株式会社 青森県上北郡野辺地町 野辺地陸奥湾FM 93.2 100(590) 令2.8.25 令2.9.7
株式会社エフエム熱海湯河原 静岡県熱海市 下多賀 79.6 10 令2.8.28 令2.9.1

※出力のかっこ書きは実効輻射電力(プレスリリースに明記されている場合のみ。)

未開局の局

予備免許が下りていてまだ本免許が下りていない局は以下の通りとなります。これ以外に公表されていないものがある可能性はあります。

放送局 設置場所 中継局名*4 周波数(MHz) 出力(W) 予備免許付与日 開局予定
株式会社エフエム真岡 栃木県真岡市 JOZZ3CV-FM
エフエムもおか
87.4 20 令和2年4月6日 令和2年11月15日
大館放送株式会社 秋田県大館市 JOZZ2BS-FM
おおだてエフエム
81.4 20(8) 令和2年6月11日 令和2年11月
青森放送株式会社 青森県下北郡大間町 大間下北FM 78.8 20(40) 令和2年7月9日 令和3年1月
株式会社アクティブレイン
SKY WAVE FM
千葉県千葉市中央区 JOZZ3CW-FM
アクティブレインエフエム
89.2 20 令和2年7月17日
株式会社新潟放送 新潟県上越市 高田FM 94.8 30 令和2年7月17日 令和2年12月?*5
株式会社柏崎コミュニティ放送
FMピッカラ
新潟県柏崎市大字加納 柏崎芋川FM 76.3 10 令和2年8月28日
エフエム魚沼株式会社 新潟県魚沼市山新 山新 81.4 3 令和2年9月17日
株式会社小江戸FM
ラジオ川越
埼玉県川越市 JOZZ3CX-FM
こえどエフエム
88.7 10 令和2年10月7日 令和3年2月*6
深谷コミュニティFM株式会社
FMふっかちゃん
埼玉県深谷市 JOZZ3CY-FM
ふかやエフエム
88.5 20 令和2年10月21日 令和3年1月*7

開局するにあたってwebサイトを作ることは必須事項ではありません。しかしググっても何の情報も出てこない局ってどんな手段で開局をPRしているのだろう。秋田県大館市の局については何一つ掴めていません。11月に開局するならもう開局直前です。

閉局するコミュニティFM

今季はRadioNEOとFM PORTという2つのFM局が6月30日に閉局という事案が発生したのですが、そのほかに閉局する(した)コミュニティFM局は3局あるらしいです。
閉局するにあたっては管轄の総合通信局に届け出があるはずなのですが、そのプレスリリースが出たのは1件だけです。

これがなかなかユニークと言いますかややこしいと言いますか、このプレスリリースにはこんな但し書きが付いています。

※同社は津山市勝央町及び鏡野町の一部を放送区域として放送している「特定非営利活動法人つやまコミュニティFM(エフエムつやま)」(JOZZ8AR-FM 78.0MHz 20W)とは別の基幹放送事業者であり、同法人の放送は今後も継続されます。

 ―『総務省|中国総合通信局|株式会社エフエム津山(コミュニティ放送局)の廃止届を受理』より

岡山県津山市コミュニティFM局が2局ある町です。ひとつはNPO法人ミニFMを発展させて2009年12月に開局した「つやまコミュニティFM(エフエムつやま)」、もうひとつがタウン誌を営む会社が2010年2月に開局した「エフエム津山(レディオつやま)」です。まぎらわしいこともあってか、この「エフエム津山(レディオつやま)」は「MegaWAVE76.3」という愛称もつけています。Wikipediaによるとこの愛称が付いたのは2012年8月のこと。実は2012年に3月1日から8月30日まで放送を休止したことがあります。この時は復活したのですが、今回『令和2年10月25日をもって廃止することとした』のだそうです。Wikipediaには公式サイトが『2017年以降、タイムテーブル以外の更新を停止している』とあり、サイトを見てみると確かにその通りでした。言い換えればタイムテーブルは最新のもの(2020年5月現在)になっているのですが、夕方から夜にかけてサブカル系(?)の番組がある以外は音楽を流しているようです。趣味の世界だねぇって感じを受けます。ちなみに存続するほうの「つやまコミュニティFM(エフエムつやま)」はコミュニティFMらしい地域情報を中心とした番組表になっています。

問題はあとの二つでして・・・。
ひとつはコメント欄にもいつぞや触れた方がいらしたし私もちょっと触れましたが、埼玉県朝霞市のクローバーメディア。
元は2007年4月に朝霞市に開局した「すまいるエフエム」(76.7MHz、1W)なのですが、これが出力1Wしか無い局でして、他の市に電波が飛んでいけないからと厳しく規制されて地元の市でも受信できないありさまだったそうです。
埼玉県朝霞市志木市和光市新座市は4市で一つの地域、いわば四つ葉のクローバーのようなものと捉えるべきなのかもしれません。2018年1月に医療法人や薬剤師試験予備校などを営むMIZUHO Group(代表は元・志木市長でもある)のクローバーメディアに経営譲渡され「クローバーラジオ」となり、本社・スタジオが埼玉県志木市に移転(送信アンテナは朝霞市のまま)、6月に念願の増力と周波数変更を果たします(77.5MHz、10W)。
それでも経営は苦しく、今年9月30日をもって閉局したはずでした。しかし経営譲渡先が見つかったとして停波はせず、11月の放送開始に向けた移行期間として電波を出しているそうです。
そんな奇特な企業はどこか。埼玉県では川越市深谷市に新局ができるのですが、川越市の局ができるときのプレスリリースの参考資料では『株式会社クローバーメディア(クローバーラジオ) 志木市』となっていたものが深谷市の局ができるときのものでは『株式会社コミュニティシェアFM 朝霞市』に書き替わっていたと言います。「はてなアンテナ」に入れてある「放送まにあ」さんのところに載っていた情報です。で、その名称をググると法人番号という番号を教えてくれるサイトが引っ掛かりまして、そこに載っていた住所をググりますと「株式会社リゾン」という朝霞市の不動産会社のある場所でした。歴史のある地元企業のようなのでたぶんこの会社に経営譲渡されるのでしょう。地元に引き受けてくれる企業があるというのはありがたいことです。

最後は長崎市にあった長崎シティFMです。
長崎市は前述の岡山県津山市のようにコミュニティFM局が2局ある市でした。ひとつはNPO法人で2005年9月に開局した長崎市民エフエム放送、もうひとつが株式会社で2005年12月に開局した長崎シティエフエムです。
おかしいと気が付いたのは「ラジオ番組表」2020春号の周波数リストの正誤を確認するために総務省電波利用ホームページからFM局の一覧をダウンロードした時でした。1局足りなかったのです。で長崎シティエフエムのwebサイトを見てみると長く更新されていない様子、でもfacebookへのリンクを見るとそちらは動いている様子に見えました。であれこれ検索してみたのですが当時の私には収穫を得ることができませんでした。
しばらく経って、個人のブログに4月30日で閉局したことが書かれていたと知りました。
誰にも知られずに黙って消えていく。人間ならそれもアリかもしれませんが他人に聴いてもらうこと、他人に知ってもらうことが目的の放送局が誰にも知られずに、地元の新聞やテレビ局などのニュースサイトで報じされた形跡もない、まったく話題に上らないまま消えていくというのは悲しいことです。
Wikipediaには長崎市の独特な地形に起因することのようなのだけど、長崎市民エフエムのほうが『エリアが競合する長崎シティエフエムの風頭山の送信所よりも標高や位置的に恵まれている』とあり、言い換えれば長崎シティエフエムは先発する長崎市民エフエムより可聴範囲が狭かったそうで、それが苦戦した原因だったのかもしれません。webサイトは2013年のまま今も存在し、facebookページの窓は無くなっています。消滅したことの確認も取れないのでWikipediaでは「かつて存在した日本のコミュニティ放送局」のカテゴリに移されずにいます。
いや、『廃業を確認した』とおっしゃる方がいらっしゃいます。
ニュースダイアリー・2020年(令和2年)4月分
この方は、地元の私が1年以上気が付かないでいた宮城県道の大規模な再編をその当時に知っていて表にまとめておられます。
ニュースダイアリー・2019年(平成31年)3月分
これさえあれば、むみもめの糞ブログなんかいらねぇ_| ̄|○

*1:「いいあんべ」と読む。「いい塩梅」の東北訛り。

*2:予備免許のプレスリリースでは8W(実効輻射電力0.11W)だった。

*3:出典:北上市コミュニティFM男山送信所と臥牛中継局の運用を開始しました/北上市公式ホームページ

*4:コミュニティFMの親局については呼出符号と呼出名称

*5:出典がBSNリスナーの個人Twitterなのが心許無い。局の公式サイトを探しても何も見つからなかった。

*6:出典は局の公式Twitter

*7:出典はググってみつけた、埼玉新聞の記事を転載したサイトのキャッシュ。『来年1月中に開局を目指すことに伴いラジオ局を支援する株主を募集している。』