「アイネクライネナハトムジーク」とか「殿、利息でござる」とか

MOVIX利府から帰ってきたらすぐに書き始めるはずだったのに気が付けば11月…すでにMOVIX利府は閉館してしまいましたが、10月のていで書きます。
映像研に手を出してきた - みむめもーどの続きの話です。
閉館記念で再上映してほしい作品の人気投票をしていたらしく、その作品の中の一つに「アイネクライネナハトムジーク」があったのでした。昨秋公開され、観に行こうと思っていたのに見逃してしまった作品でした。仙台市在住の伊坂幸太郎さんの短編集が原作なんだそうで、映画のロケ地も仙台市。主演は三浦春馬くんで、多部ちゃんは春馬くんと運命の出会いをする女性の役。この二人は何度運命の出会いをしているのだろう(少なくとも少女漫画「君に届け」の実写映画版とフジ系ドラマ「僕のいた時間」で運命の出会いをする間柄を演じている)。
多部ちゃんカワイイ、多部ちゃん面白い、と書いている割りには多部ちゃんが出ている映画を実は見たことがなかったりする私。落ち着け、落ち着け、と自分に言い聞かせるのだけど、なかなか多部ちゃんが出てこない。どうみても多部ちゃんじゃなくて貫地谷しほりさんだよなぁと思いながら時間は過ぎていきます。
ストーリーはあって無いようなものと書いたら怒られるか。いくつかの小さなエピソードが連続していて、前のエピソードが後のエピソードの伏線になっている造り。どうやら偶然の出会いがテーマのようで、貫地谷さんも偶然の出会いから結婚まで行きついてしまいます。あっ、いちおうボクシングの試合というはっきりしたストーリーはあるのか。
春馬くんの親友の家族が話の中心というか…濱田岳くんをさらに謎にしたような男、矢本悠馬さんという方なのですね。なんでこんな人がかわいい奥さんと二人の子供と幸せな家族を持っているのか分からない。一見ちゃらんぽらんで大人なのに子供な感じなのに実はちゃんとしたところはちゃんとしていたりする。で、かわいい奥さんは森絵梨佳さんだったのか。しばらく仙台放送川島隆太教授のテレビいきいき脳体操」を見ていなかったので気が付かなかった。
一方、春馬くんは仕事に追われ出会いの無いサラリーマン。仙台駅前のペデストリアンデッキで街頭アンケートを取らなくてはならないのだけど、街頭テレビに映るボクシングの試合に夢中で足を止めてくれる人はいない。そんなところに答えてもいいですよと止まってくれたのが多部ちゃん。
その時はそれだけだったのだけど、ある夜運転中に親友が言うのです、通りがかった工事現場で交通整理をしていたのが女の子だって。ふと思い立って車から降りた春馬くんが現場に戻ると、そこにいたのは多部ちゃんでした。
そんな偶然の出会いがあって10年後、二人は彼氏彼女の関係になっているのでした。偶然の出会いってそういうものなのですかね。しかしウェスティンホテルのレストランでディナーをした帰りにアパートの前で指輪を出される。ふつうレストランでですわね。何故そこで出すのを躊躇して家の前でなんだ。そりゃ多部ちゃんでなくても実家に帰らせていただきます。
しばらく音信不通だったのだけど、ある夜偶然多部ちゃんを見つけて春馬くんは追いかけます。仙台ロケなんでね、仙台駅前を出た川内営業所前行の市営バスが錦町公園経由であることに気を取られてしまい、肝心の二人の仲直りが頭に入ってこない(交通公園線は電力ビル経由なので錦町公園は通らない、仙台駅前を経由しない系統はあるにはあるらしいがこのシーンに合う時刻には無い)。
劇場のスクリーンで多部ちゃんの喜怒哀楽を堪能できたのは楽しかったんですけどね。


アイネクライネナハトムジーク」が閉館記念のリバイバル上映作品に選ばれたのは当然地元仙台に住む小説家の原作で地元仙台でロケをして製作された作品だからなのでしょうが、三浦春馬くんの訃報も要因の一つだったのかもしれません。
Wikipediaを眺めてみて、彼の出演作できちんと見ているものが2005年上期の朝ドラ「ファイト」本仮屋ユイカちゃんを何かと追っかける同級生の役)、「ごくせん」の第3シリーズ、2011年7月期のテレ朝系のドラマ「陽はまた昇る」(警察学校の学生の役)の3本しかない。「14歳の母」や「ブラッディ・マンデイ」はビデオテープの山の中にあるはずだけど実は見ていない。「僕のいた時間」や「太陽の子」は録りっぱなしでHDDレコーダーの中。
これはいかんなと思って遺作となった火曜ドラマ「おカネの切れ目が恋のはじまり」は見ました。
美の壺」か? と見まがうような草刈正雄さんのナレーションから始まる謎なドラマ。いや謎なのは主人公である松岡茉優さんと春馬くんのお金に対する考え方の違い。松岡さんはお金に細かいというよりはよくよく考え抜いたうえで最低限の出費しかせず得たものには最大限の感謝をする、それならそれでいいかと思ったのですが、片思いの相手にあれこれ貢ぎ、このために節制してきたのかと勘繰ってみたり。いいんだか悪いんだかわかんない。春馬くんのように思うがままに浪費するほうが実は健全なのではないかと勘違いしそうになったりもします。玩具メーカーの御曹司でおもちゃのアイデアをあれこれ考えていたり、よく言えば少年の心を持ち続けているとも言えるし。話の舞台が玩具メーカー経理部なので(松岡さんの事務所の先輩でもある)多部ちゃんの「これは経費で落ちません!」をほうふつとさせたり。
第3話で松岡さんと片思いの相手との関係が清算され一段落というタイミングで不意に春馬くんと松岡さんのキスシーン。その翌日、春馬くんはどこかに出かけたらしいというのが最終回になった第4話。本来なら全8話の予定で第2章的な展開が予定されていたのでしょうけど、松岡さんが清貧を心がけるきっかけとなった実の父親との関係を片付け、連続ドラマとしてのまとまりを持たせて終了にこぎ着けました。春馬くんが演じる役に対する述懐のようでもあり春馬くんを悼んでいるようにも思えるシーンがあったり、スタッフも一生懸命考えたんだろうな。


アイネクライネナハトムジーク」の感想を書きあぐねている間にMOVIX利府からメールが来ました。
「殿、利息でござる」の中村義洋監督の舞台挨拶があります、というものでした。行かない理由がありません。運良く仕事が休みの日だったので観に行きました。
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ピンボケしてて何が書いてあるか読み取れないのが残念なのですが、公開当時のエピソードが書いてありました。「殿、利息でござる」は吉岡宿、現在の黒川郡大和町吉岡が舞台。松竹にとってMOVIX利府は最寄りの劇場となります*1
殿っていうぐらいだから時代劇なのです。道徳の教科書に載りそうな真面目な話でね、なにせ原作が載っている書籍のタイトルが「無私の日本人」ですからね。笑えるシーンなんて知恵者が「お上(おかみ)に金を貸す」というアイデアをぶち上げたとき、飲み屋の女将(おかみ)が「要りませんよ」と応えるところぐらいしかありません。その女将の役が竹内結子さんだったのです。
映画の上映が終わると松竹の担当の方が入ってきて中村監督を呼び込みます。
思い出せるだけ思い出して書いてみます。
公開当時は言えなかった裏話。主役の阿部サダヲさんが中盤出てこなくなるが、阿部さんのスケジュールの都合。なんでもグループ魂のツアーと重なったとか。阿部さん以外にも妻夫木さんとかスケジュールの都合をつけるのが大変だったそうで撮影にも影響しているのだそうです。
阿部さんが行水というか水垢離というか頭から水を被るシーンがあります。時代劇なので当然かつらを被っているのだけど、本来かつらは水を被っちゃいけない物なのだそうです。かつらの担当には嫌がられたそうなのですが、その撮影を阿部さんがスケジュールの都合で抜ける直前に行い、いない間にかつらのメンテナンスをしてもらったのだそうです。
かつらについてもう一題。監督が山崎努さんに出演してもらうべくお願いしたところ山崎さんから手紙が来て、出たいのだけどかつらを被るのが・・・。というので山崎さんだけ特殊メイクでかつらを被らずに済むようにしたのだそうです。
そういえば本作は山崎さんが屋敷の2階から夜逃げする一家を見下ろす場面で始まり、屋敷の2階から250年も先となる現代の吉岡の町を眺める場面で終わるのですが、コロナ禍のこのご時世においてはとても意味のあるラストシーンになってしまっている気がします。
ところでどうして本作を製作することになったのか。震災は大きなものの一つだったようですそんなとき磯田道史著「無私の日本人」に出会い「穀田屋十三郎」の映画化を思い立つことになるのですが、時代劇はお金が掛かる。当時の東日本放送の両角社長に「おカネを出してくれなければ他所に持って行く」と脅し(笑)、東日本放送の開局40周年、松竹の創立120周年という節目だったことでお金の目処が立ったのでした。

本筋から外れますが、監督は「アヒルと鴨のコインロッカー」と「ゴールデンスランバー」で仙台とは縁があります。Wikipediaによると「ゴールデンスランバー」は2011年3月12日にフジ系の「土曜プレミアム」枠で地上波初放送される予定だったんだそうですね。震災後にも「ポテチ」という作品も手掛けています。いずれも伊坂幸太郎さんの原作、仙台ロケ、そして濱田岳。そんな濱田岳くんは本作ではナレーション。
本作の配役に関して、いくつかの村を束ねる大肝煎の役が若いイケメンなのはどうなのか、たとえば濱田岳みたいなのだったらどうなのか、と考えることもあったと言います。そのイケメン、多賀城市出身の千葉雄大さんは3年後に東北放送で震災をテーマにしたドラマの主演を務め「国際エミー賞」にノミネートされることになるのですが、本作がひょっとすると力になったのかもしれません。
種明かし。濱田岳くんが本作ではナレーションになったのはスケジュールの都合が合わなかったからだそうです。
テレビ東京には『午後のロードショー』というのがあって、ゴールデンウィークの終わる5月6日に放送されたのだそうです。テレビ朝日に戻っていた製作当時の両角東日本放送社長と(新コロで非常事態宣言が出ていた)こんな時期だからこそ見てほしい映画だよねと話し合ったそうです。当時子育て中だった竹内結子さんとも買い占めに走るような人たちにこの作品を観て考えてもらいたい旨のメールのやりとりがあったという話をされていました。
本作はメインキャストがほぼほぼ男性でむさくるしい現場だったそうなのですが、竹内結子さんの出番がある日だけは現場が華やいだそうです。


何でも新コロのせいにしてやりたいところですが、新コロのせいか「♪都会では自殺する若者が増えている」。
中居くんの病院コントこと「白い影」で中居くんに自殺され遺言VTRを観て泣く結子たんを見て泣いたことを昨日のことのように思い出します。あれ2001年1月期の日曜劇場なのね。そんな昔か。19年も癒えていないのか俺は。
黄泉がえったりまた会いに来てくれたりしないものだろうか。ご冥福をお祈りだなんて、冥途に行ってほしくない。巷間言われる産後鬱か他に止むを得ない事情があったのかは分からない。でも生きていてほしかった。
もし天国にいるのなら、かつてフィラデルフィアクリームチーズのCMで演じた天使でいてくれるといいかな。

*1:松竹に限らなければ富谷市の109シネマズ富谷がある