「ラジオマニア2022」レビュー

出版業界の一部で話題になっている「ラジオライフ」の三才ブックスから今年も8月30日に「ラジオマニア2022」が発売されました。

書影の表示のためにAmazonのリンクを貼り付けていますが、これをクリックしても私にお金は入りません。また私がAmazonの販売方針を支持しているというわけでもありません。その件は本題ではないので後回しにして、本題である本書の紹介をしていきます。

表紙はジーンズの青とポケットラジオの山吹色の対比がきれいです。SANGEANというメーカーの商品のようです。ジーンズのポケットに何か入っているようで(このポケットラジオの裏面なのかなという気がします)、ラジオは服の上に置いてあります。
表紙裏は三才ブックス刊行物のご案内「ラジオ受信バイブル2022」と三才ブックス新刊のご案内「ラジオと憲法」? 目次の次にある「ラジオマニアニュース」で紹介されており、サイキッカーとして知られる角田龍平弁護士が「労働新聞」に連載したコラム集だそうで、放送と法律に関する論考ではないみたいです。
【本棚を探索】第32回『ラジオと憲法』角田 龍平 著/塩田 武士|書評|労働新聞社
で、改めて表紙と同じ写真。表紙には『電波派もradiko派も劇的向上テク』というキャッチコピーが書かれていますが、こちらの扉には『全方向から! ラジオを楽しもう』と書かれています。
モデルとなっているポケットラジオは「SANGEAN DT-800」。サンゲアンではなく「サンジーン」(山進)という台湾の電子機器メーカーの製品なのだそうです。目次と「ラジオマニアニュース」の次に、このラジオに魅せられてしまったライターさんが品番の異なる4種類を入手して徹底使用したレポートを5ページにわたって書いています。品番の異なると書きましたが、国によってFM放送の周波数帯が異なっていたりしますし、米国向けには「NOAA ウェザーアラート」という緊急警報放送みたいな機能がついているようです。ググってみたら1万円ほどするようでポケットラジオのしてはお高めという感じです。
恒例のパーソナリティ深掘りインタビュー(10ページあります)は「チキチキジョニー」のお二人。私はNHK生活笑百科」でたまに見るかな位の印象しかなかったのですが、KBS京都でワイド番組を持たれているそうで、その番組のことはもちろん結成前のそれぞれの子供の頃のことから、松竹芸能の門を叩くも社の方針と合わず一度クビにされ再契約を勝ち取るまでのことなど、大変面白く読みました。
巻頭カラーページはこの後、「短波ラジオ3機種徹底比較」、「コスパのよいBluetoothスピーカー使用レポート」(Bluetoothスピーカー9機種とスマートスピーカー1機種)があります。

三才ブックス新刊のご案内「周波数手帳ワイド2022-2023」「裏テレビ活用テクニック17」の広告で巻頭カラーページが終わり、モノクロページに入ります。まずは第1章「ラジオ番組をもっと楽しもう!」。
「東京・半蔵門のスタジオ」ことミュージックバードに潜入取材しています。本書的にはPCM放送じゃなくコミュニティチャンネルが取材の中心となります。FM東京JFNよりはコミュニティFMに近いスタジオのつくりのようです。18年続いている夜ワイド「大西貴文のTHE NITE」の大西貴文さんのインタビュー、主な番組の紹介、ミュージックバードの社長さんのインタビューもあります。
ほかには2023年以降の「民放AMが止まる近未来予想図」、「radikoで聴きたい各局イチ押しプログラム!」があり、東北放送からは「NEWNEWS」、Date fmからは「RAD~Radio All Day~」が紹介されています。TBCラジオ『佐々木眞奈美の「あっぺとっぺファーマシー」』を発見したRSK山陽放送『アモーレまったりーの(月曜)』の「坂の盗耳(ばんのぬすみみ)」も紹介されています。

真ん中のカラーページは恒例の1局集中ガイド。今回は「レディオキューブFM三重」。レディオキューブは正しくはradioの右上に3乗の3。3乗と3重=三重を掛けているのでしょうね。三乗すれば立方体=キューブになります。FM三重と言えばつい最近までFM愛知と放送エリアがかぶるため同じJFN系列とは思えない普通のJFN系列地方局と異なる番組編成がされていて、全国ネットのはずの番組でも三重では放送されないという例がいくつもありました。そのせいか比較的ローカル番組が充実しています。ローカル番組や出演者についてたっぷり紹介されています。

ここからは工作の記事が続きます。カラーページではステレオFMホームラジオの製作。こういうのが自分で作れると楽しいだろうなと思います。
三才ブックス新刊のご案内「ゲームラボ2022夏」「ラジオ番組表2022年春号」の広告で巻頭カラーページが終わり、再びモノクロページに。第2章「誰でもできる工作&パワーアップ改造」。ここでは「針式チューニングラジオにプリセット機能を付けよう!」、「SDG's的ラジオかんたん修理術」、「FMトランスミッタとラズパイ・Volumioで作る高音質自宅FM放送局」の3本の記事があります。

第3章「受信に役立つテク&情報」の前半は短波放送について「令和版短波ラジオ放送受信入門」、ホームセンターで短波が聞けるラジオが売ってるから放送時間帯に合わせて聴いてみようという本当の入門。「2022年版短波BCLの最新動向」、海外短波ということでウクライナについての情報もあります。ここでは全世界の放送局の周波数が載っている本「World Radio TV Handbook」(WRTH)廃刊決定という記事が出ているのですが、本稿の元ネタである「月刊短波」のサイトを見たら本稿執筆後に新たな展開があったようで、ドイツの企業が発行権を取得し来年度も発行されることになったようです。WRTHの意義を高く評価してくれる方に拾ってもらってよかったですね。
後半はAM・FM放送の移動受信、受信地探しについて。私もかつて牡鹿半島で在京AM3局のFM補完放送が普通に受信出来てびっくりしたことがありますが、本誌でも岬というのは遠距離受信に最強なのではないかという独立した2つのレポートが載っています。もちろん岬でなくても適地はあり、地図とにらめっこしてここならよさそうと考えるだけでも楽しくなります。
第4章「ラジオハイパーマニアックス」はマニアックな読み物のページですが、ここでも将来なくなるかもしれないNHK第二放送を都道府県や送信出力の観点から分類してみたり、受信してみたりするという読み物があります。ほかにも、中古PCとradiko録音用ソフト「らじれこ」を使って「radikoサーバー」を作ってみるレポート、AIノイズキャンセリング機能をラジオ受信に使ったらノイズは減らせるのか試してみたレポート、ラジオ局の内部の小ネタをあつめた「ラジオ局超ローカルニュース」、そして「ラジオ番組表」2005春号の一部局のコピーがあります。文化放送東海ラジオ朝日放送に「ナベ・とものチアーズランド」がネットされていたという、今となっては信じられないようなことがあった時期でした。
巻末のプレゼントコーナーには、巻頭カラーページでモニターしたスピーカーのうち5台がプレゼントされるそうなので、別に応募券とかないのですが欲しい方は本誌を購入されるのが良いと思います。裏表紙裏には「三才ブックスオンラインショップ」で9月29日まで有効な500円オフクーポンのコードも印刷されています。

今回も別冊付録「RADIO-MANIA handbook 2022-2023」が付いています。ところどころデータがアレだなと思うところはありますが、私は常にカバンに入れて持ち歩いています。


ところで、冒頭にちらっと書きましたが、三才ブックスが出しているムック本の一部が鳥取県有害図書の指定を受け、鳥取県の条例により鳥取県内の書店ではもちろんのことインターネット上でも売ってはいけないというので、Amazonはそれらの本を売らないことにしたと言います。
有害図書の指定は宮城県でもやっていて大体似たようなものがやり玉に挙げられているようですが、そう言われれば誰がどうやって決めているのかは分からない(宮城県のサイトをサラッと見てみたけど分からなかった)。今般三才ブックス鳥取県にどこがどうダメだったのか問い合わせたようで、その顛末が「ラジオライフ」誌に掲載され、三才ブックスのサイトでpdfファイルの形で閲覧可能になっています。
有害図書の指定という制度自体が形骸化しているというのも問題の一つであり将来この制度をどう変えれば青少年の健全育成に資するのか考えることはもちろん大切なのですが、たぶん出版社として困るのは、収入のメインがリアル本屋さんからネットショッピングに移った世の中でその大半を占めるAmazonに扱ってもらえないというのはおまんまの食い上げになるということなのかな、と今回の顛末を読んで思いました。
ネットショッピングであやしい本を買おうと思ったのにその本が見つからなかったら、どこかの都道府県の条例に引っかかっている可能性があることを頭の片隅に置いておき、その際は出版社から直接購入する、というのが消費者側の自衛策なのだと思います。