【お断りとお詫び】
私は当初本稿の書き出しを
『読書感想文です。これを書き始めた時の「はてな」の今週のお題が「ページを読む手が止まらない」だったものでね。』
と書きました。
このエントリがアップされて何時間も経たないうちに「はてなスター」が付いたのですが、付けてくださった方の「はてなブログ」を覗いてみたらガチの書評を書いていらっしゃる方でした。何らかの偶然が重なってたまたまこの書き出しを見つけてしまい何かの書評と勘違いされたのではないかと、私の冗談を真面目に取られてしまったことを申し訳なく思っています。
今回の私の行為は拙blogコメント欄では以前から予告していたことだったのですが、そこを継続して読んでおられる方は3人ぐらいしかいないわけで、たまたま本文を見てしまった人には何のことだかわからないままもらい事故に遭ったようなものだと思います。
この度は紛らわしい行為でご迷惑をおかけしました。「はてなスター」を消せるものなら消して拙blogのことなぞ忘れてください。
【お断りとお詫び ここまで】
東北放送株式会社の有価証券報告書を読んでみようと思います。
有価証券報告書等の開示書類を閲覧するサイト「EDINET」の書類検索で東北放送を検索して最新のもの(第93期)をクリックします。株主総会が終わったタイミングで最新のものが公開されるのです。
それでは読んでみよう、と思うのですが、経済に関する基礎知識の無い私には読み方が分かりません。
とりあえず読みながらあれやこれやみむめもなことを書いていきますので、先生、解説をお願いします。
コメントですが、たぶん一言二言では済まないと思います。先にメモ帳とかエディタで文章を書いておいて、コメント欄の小窓に貼り付けたほうがよいかもしれません。
あっ、先生以外の方でも優しく易しく教えていただく分には歓迎します。
企業情報
EDINETで有価証券報告書を開くと新しいウィンドウが開きます。
- 提出本文書
- 監査報告書
- 代替書面・添付文書
という3つのタブが上にあり、提出本文書、つまり有価証券報告書の各項目が書かれた目次のフレームが左に出ます。表紙に続いて本文があり「第一部 企業情報」「第二部 提出会社の保証会社等の情報」からなります。東北放送に関して言えばそのほとんどが「第一部 企業情報」で、第1から第7の節に分かれています。
企業の概況
冒頭、1【主要な経営指標等の推移】として売上高とか経常損益とかの一覧表があります。あとで財務諸表のところでも触れますが、まず連結経営指標等、次に提出会社の経営指標等。言い換えればまずtbcビジョンと東北映画制作を含めた東北放送グループ全体の連結決算を紹介して次に東北放送単体の決算を紹介しているということです。いずれも当期を含め5期分の数値があるので、売上高が年々落ちてきているな、とか今年は経常赤字に転落したけど純利益は前年度のほうが低かったんだな、とか連結と単体でそんなに数字が変わらないからグループ会社の経営規模って本体と比べるとかなり小さいのかな、とかいろいろ思うことができます。わからない専門用語がいくつもあるのですが、目次を見ているとおいおい説明されるのかなという気もします。
2【沿革】はそのとおり東北放送の簡単な歴史について。東北映画制作がtbcビジョンより先にできていたこと、tbcビジョンの前身が仙台ケーブルテレビジョン研究所なる社名だったこともわかります。この社名はいま見るまで気が付かなかった。毎年漫然と見過ごしてたんだな。tbcビジョンの沿革もこれを読むとわかります。最後に『2019年3月8日:東北映画制作株式会社の資本金を85,000千円に増資』これもいま気が付きました。5億円から8億5千万円に、70%から82.3%に、あれっ前に調べた時と違う。5億の70%は3億5千万。増資分3億5千万がまるまる東北放送の出資分だとすると計7億。8億5千万のうちの7億だからおよそ82.35%。私が前に調べた80:20は間違っていたのか。(7月25日修正:何書いてるんでしょうね、桁を読み間違えています。正しくは5千万円から8千5百万円です。また、この増資に関してはコメント欄に異議が寄せられていますので後日別の場所に何か書くつもりです。書き直したらまた修正します。修正ここまで)
3【事業の内容】と4【関係会社の状況】では親会社と子会社の関係がわかります。かつてはこの中に仙台シティケーブルが載っていたのですね。拙blogコメント欄で何度か話題に上がっていますが既に清算結了、きれいさっぱりなくなっています。こちらは持分法非適用関連会社でした。番組制作会社の東北ティ・エル・シーが河北ランド、河北TBCカルチャーセンターとともに持分法適用関連会社となっています。ティ・エル・シーはWikipediaによると東通ライティングセンターの略だったみたいです。東通共々今般のTBSの子会社再編により今年4月1日付でTBSアクトに統合されティ・エル・シーの業務はデザイン本部ライティングセンター照明技術部というところに移ったようです。今後は東北ティ・エル・シーはTBSアクトの子会社ということになるのでしょう。東北映画制作(株)が特定子会社に該当という注釈があります。前述のとおり増資し出資割合が増えたということなのでしょうね。
5【従業員の状況】は従業員数や平均年齢・勤続年数、平均年間給与、労働組合との関係についての記述があります。従業員数は冒頭の1【主要な経営指標等の推移】で経常利益などとともに表にまとめられているので大事な数字ということになります。従業員数が減っていることがわかるのですが、括弧書きの数、[外、平均臨時雇用者数]が当年度にがっつり減っていることが5年間の推移でよくわかります。臨時従業員には、パートタイマー及び嘱託契約の従業員を含み、派遣社員を除いているという注釈があります。ラジオのワイド番組で電話を受け付けていたビューティーオペレーターズの皆さんや定年退職後も定時ニュースを読んでいた元局アナの方々はここに含まれると考えてよいのでしょうか。ラジオで帯のレギュラー番組を持っている人たちは含まれないのかな。
事業の状況
1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】では、自社の事業内容についてこういう自己判断をしていますよという説明があります。(1)経営方針でまず述べられるのはコロナ。いかにコロナが経営に影を落としているかが如実に表れています。(3)経営環境でも同様の記述が出てきます。コロナに対応できないとこの先やっていけない困った世の中ですからそれに対処することが一番目。子会社の合併とか震災とか今流行りのSDGsとかについても触れています。順序が前後しますが(2)経営戦略等ではコロナのせいでめちゃくちゃだった去年よりは増収(おととしと比べればまだ少ない)を見込んでいることが書かれています。ラジオについては収入目標は前年度比104.6%。そのために媒体価値の向上とリスナー層の拡大を図るとあります。具体的にこうするというのが(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題。7項目ありますがその1番目、媒体価値の向上で
広告主が広告効果の可視化を求める傾向は強まる一方だが、ラジオ・テレビの価値をさらに高めて、しっかりアピールするとともに10年、15年先を見据えた次世代対策(小中学生のファンの拡大等)に努める。
と述べられています。アイドル番組を作ってもリスナーは私ぐらいの歳のおじさんたちばっかしというリスナーの平均年齢の高いTBCラジオで小中学生のファンを拡大するための策を考えるのは難しい問題ですね。去年はたぶんコロナのせいでできなかった「こども天気予報」やTBC夏まつり会場でのラジオスポットの録音、社会科見学に来た小学生にラジオの生放送に出てもらうこと、いずれも小学生にラジオに親しんでもらうための努力なのでしょうね。テレビはキー局のTBSテレビが“新ファミリーコア”なる概念を提唱し4歳から49歳までの個人視聴率を取りに行くことを宣言しています。系列局である東北放送も同様になるのでしょう。私は今年いっぱいでこのターゲットから外れ、TBSテレビにとって私はアウトオブ眼中になります。それが嫌なら4歳以上の子供を持てばよいのです。話がそれました。7項目中6項目めに役職員の健康の維持というのがあり、コロナ対策と並んで『長時間労働の抑制、長期休暇の取得促進等により役職員の健康維持に努める』とあるのですが、アナウンサーに関しては現在スクランブル状態だからなぁ・・・。
2【事業等のリスク】はわが社の事業にはこんなリスクがありますという、自分で自分の短所とか弱点を言いふらすおかしな項目だなと思います。東北放送の事業には大きく言って3つのリスクがあるのだそうで、ひとつは景気が悪くなると広告費が減るということ、ふたつは広告費がネットにシフトしているため放送への広告投下量が下がること。これらは広告を出してもらえるように頑張るしかないか。みっつは自然災害。面白かったのでコピペしておきます。面白いって言ったら怒られるか。
AMラジオは、高台にあるFM補完局(ワイドFM)からサイマル放送を行うことで、津波や液状化現象による放送停止リスクを大幅に改善した。演奏所は新社屋にあり、地震等の自然災害および施設障害のリスクも改善した。ただし、スタッフの大部分が出社できない大規模災害の場合は、放送事業の維持が困難となり、当社グループの業績と財務状況に影響を及ぼす可能性がある。
また、感染症などの影響により催事やコンサートが中止や延期となった場合にも、当社グループの業績と財務状況に影響を及ぼす可能性がある。
電波が出せないということはたぶんない。でも震災がもう一度起こるとかすればわからない。それはそうでしょう。そしてコロナ。これはすでに業績に影響を与えてしまっています。
3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】はこれまでとは逆にわが社はこうやって儲かったという自己分析。6項目あります。多分ここが一番大事な場所なのかもしれません。長いです。
その1、経営成績の状況。コロナのせいで動画配信サービスとか広告費がネットにシフトしたせいで赤字になった、とまとめたら乱暴すぎるか。この1年間を振り返って、新社屋での業務開始、「モリーノ」、「杜の放送局」、「小さな神たちの祭り」の各賞受賞、「10年後の僕ら」、「SDGs」、みんなこの1年の出来事だったのかと思うといろいろあったんだなぁ。その年度の締めが東京支社の移転。別件で移転の事実を知って一つのエントリに書き上げようと思ってたのだけどやらずじまいでいます。これも経費削減になっているんだそうですよ。後で何か書きます。
この部分はさらに細かくセグメント別の経営成績が自己分析されています。セグメントって東北放送では放送事業かそれ以外かの2つなのですが。放送事業はコロナのせいで減収は免れないとラジオ、テレビとも前年度比92.1%の収入を見込んでいたのだけど、ラジオについてはタイムセールスでは上期81.1%、下期は90.4%、スポットセールスでは上期が63.7%、下期は84.7%。テレビについてはタイムセールスでは上期は86.2%、下期は91.2%、通期は88.7%。スポットセールスは上期は68.8%、下期は101.1%、通期では84.9%となった。(数字はいずれも前年度比)。上期がひどい。逆によく下期で盛り返したなと思います。『「仙台国際ハーフマラソン大会」や「tbc夏まつり」など大型イベントの中止やレギュラー提供の降板が相次ぎ』と書かれていて、大型企画が無くなるというのが放送局にとって大変なことなのだと分かります。ラジオは『コロナ禍での新しい生活様式を提案する特別番組や、(中略)特別番組「tbcラジオde夏まつり」などを制作放送して収入に結び付けた。』とあります。『新しい生活様式』に関しては私が東北放送を非難していると指摘する5ちゃんねるの書き込みもありました。あの特別番組がなかったらもっと大変なことになっていた、あの特別番組を企画した営業マンに今後私は頭を上げることはできないことになります。話を元に戻して、放送事業の売上高は、6,455,323千円。前期同期比14.5%減だから85.5%。低めに見積もったはずの収入目標を下回ることとなってしまい、これにより営業損失を計上することとなりました。次年度の目標として『ラジオ放送収入は、ラジオの媒体価値や聴取率向上により、テレビ放送収入は、テレビの世帯視聴率・個人視聴率のアップによるスポットシェア拡大により、事業関連収入ではイベント集客増を図ることで増収を目指す』こととなります。イベント企画運営や保険代理業務、映像制作など、その他の事業のセグメントは、売上高は234,870千円(前年同期比4.6%減)で、映像制作やイベント企画運営の受注減により営業損失は前年度より拡大する結果となりました。
長くなっていますがまだその2、キャッシュ・フローの状況・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報。キャッシュ・フローというのは直訳すれば現金の流れ? 素人の感想文なので知識のある人からしたら何書いてるんだって思われるでしょうけど。営業活動、投資活動、財務活動の3種類の流れがあるのね。財務諸表のうちキャッシュ・フロー計算書の内容について述べている節ということになります。営業活動による資金の増加は、644,520千円(前年同期比121.3%増)。あれっ、営業赤字なんじゃなかったっけと思うわけですが、『非資金取引である減価償却費の増加や本社移転損失引当金を計上していること等によるものである』と説明されています。投資活動による資金の増加は、384,165千円(前年同期は2,803,910千円の資金の減少)。前年の多額の減少というのは新社屋を建てたからで、有形固定資産や有価証券を取得すれば減少、売却すれば増加となるのがこの項目なのですね。当年度もスタジオ工事などの支払いがあるものの『投資有価証券の売却による収入があること等』により差し引きで増加ということのようです。後で触れますがNTTドコモ株を売却しています。財務活動による資金の減少は、1,303,830千円(前年同期は3,966,560千円の資金の増加)。『新社屋建設資金として前連結会計年度に4,000,000千円の借入れをしていたが、早期返済を含め1,245,000千円の借入金を返済したこと等によるもの』とのことです。株主配当はここから支出されるそうで、前年度の有価証券報告書によると52,500千円が使われています。資本の財源及び資金の流動性という細目で借入金と何年で返さなければならないものなのかをまとめた表が出ています。前年度の有価証券報告書と見比べるとどの年限でも額が減っており、借入金の返済に力を入れていることがわかります。こう書くとまるで多額の借金をしその返済のために仕事をしているかのように誤解されるかもしれませんがもちろんそんなことはありません。新社屋の建設に関する支出の一部を金融機関からの借り入れで調達しましたが、それ以外の設備資金は内部資金で対応しているとしています。営業活動によるキャッシュフローから投資活動によるキャッシュフローを差し引いたものがフリーキャッシュフロー、まさに自由に使える現金ということになるそうなのですが、当年度についてはそれが増加しているわけですから、内部資金はきちんとあると考えてよいのですね。
やっとその3,重要な会計方針及び見積り並びに当該見積りに用いた仮定。財務諸表を作成するにあたっては『経営者による会計方針の選択・適用等、開示に影響を与える判断と見積りが必要となる』のだそうです。貸倒引当金、有価証券、繰延税金資産、本社移転損失引当金、固定資産の減損の5つについての見解が述べられています。本社移転損失引当金は旧社屋の解体工事で工程の追加とかが起きれば費用の追加の可能性があるということのようですが、他の4つについてはコロナの影が忍び寄っているようです。
その4,販売の実績。ここではセグメント別に売上高が表になっています。主要顧客に対する販売実績というのもあり、電通、TBSテレビ、博報堂DYメディアパートナーズの3社でほぼ半分を占めるようです。その金額は電通は前年度と比べると18.5%ほどの減少、TBSや博報堂もわずかに減っています。
その5,財政状態の分析。貸借対照表で見かける5つの項目、流動資産、固定資産、流動負債、固定負債、純資産についてどんな理由で増えたか減ったかが説明されています。新社屋建設資金の借入金の早期返済は流動資産と固定負債の減少に関わっています。NTTドコモ株の売却はさまざまに影響を与えているようで、流動資産は増やすほうに(しかし借入金の返済による減少のほうが効果が大きい)、固定資産は減らすように働き、税金を払う都合上流動負債は増えるほうに、繰延税金負債が減り固定負債が減るほうに、その他有価証券評価差額金が減少したことで純資産も減るほうに働いたようです。
やっとその6,経営成績の分析。損益計算書で見かける5つの項目、売上高、売上原価、販売費及び一般管理費、営業損失、経常損失、親会社株主に帰属する当期純利益について説明されています。売上高については前述のその1、経営成績の状況で述べたような説明。『放送収入に連動した代理店手数料の減少の他、ラジオのネット配分費や番組制作費、テレビニュース費、イベント催事費の減少等』もあったのですがいかんせん売上高の減少が大きく、差し引き営業損失が出てしまいました。『営業外収益に放送事業における受取配当金等が計上されているものの、営業外費用に借入金の支払利息等を計上した結果』、経常損失が出てしまいました。しかしながら『特別損失として、旧社屋を中心とした固定資産除却損や解体費用などの計上があったことと、特別利益として、投資有価証券売却益の計上があったこと、繰延税金資産を取り崩して法人税等調整額を計上した結果』、親会社株主に帰属する当期純利益は前年度より増えたのです。
4【経営上の重要な契約等】、5【研究開発活動】という項目も用意されていますが、いずれも『該当事項はない。』とのことです。
設備の状況
東北放送が持っている設備についてまとめられてます。私は常々富谷にあったラジオ送信所の跡地はコストコ富谷店になっていると言い続けてきたのですが、富谷ラジオ送信所の土地はまだ東北放送が所有していることがここに明記されています。じゃあコストコって誰の土地に建ってるんだ? コストコに行ったことが無いから一度行ってみなければならないかな。東北放送の隣の結婚式場についても旧TBC八木山住宅展示場として明記されており、結婚式場を営む(株)ツカダ・グローバルホールディングに貸しているということです。富谷ラジオ送信所は貸しているとは書いていません。逆に仙台駅東口のTBCハウジングステーションは借りているとあります。テレビやラジオの送信所も大年寺山(地デジ)や荒井(AMラジオ)、気仙沼(AMラジオ)を除いて借地のようです。ただし涌谷(地デジ)は割合が6分の1とあるので在仙民放4局、NHK総合教育の6波で割り勘なのでしょうか。八木山本社はもちろん自社所有、そのほかに蔵王町に2か所と栃木県の那須に土地を持っていることも書かれています。大阪支社も自社所有なのかな、ビルのテナントである分室や東京支社と異なり土地、建物それぞれにそれなりの金額が計上されています。この項目には土地、建物だけでなく機械及び装置、その他の有形固定資産の金額、さらには従業員数も書かれています。大阪支社って従業員数4人だったのね。大阪でのお勤めお疲れさまでした(←誰に言ってるんだ?)。
提出会社の状況
大株主や取締役の名前が載っている部分です。ここで最大の疑問は11200株を所有する第2位株主、有限会社明窓社とは何者だ? ということです。明記されている住所をGoogleマップのストリートビューで見ても新興住宅地という趣でしかありません。この会社(?)は以前は東京都内にありましたがそちらもストリートビューで見ると単なる個人宅でした。ある個人が会社組織にして登録しているということなのでしょうか。株主は(団体、個人あわせて)378者いることになっているようです。宮城県も大株主で、住所として宮城県庁の住所が書かれています。株主ということは配当金がもらえるわけですが宮城県が受け取る配当金は県の予算のどこかに書かれているのかな。
取締役は藤沢智子アナが新設の子会社tbcAzに転籍したため女性がゼロとなりました。わざわざ『(役員のうち女性の比率 0.0%)』という但し書きがあります。女性の割合を増やせと声を上げる向きもあるようですが当分は無理でしょう。これだけを以って女性蔑視だとは私は思いませんが、女性管理職を増やして女性取締役にまで出世するのを待っていれば相応の年月を必要とするのは当然です。社外取締役や社外監査役に関して、取引関係はあるが利害関係はないとか、監査役の方々はこんなに立派な方ですとか監査役会に何回出席していますとか監査役としての報酬はいくらですとか、事細かに書いているのね。会計を監査する公認会計士さんについても同様です。報酬については取締役についても全員の年間報酬の合計額、退任する役員に支払われる慰労金の合計額も書かれています。単純に頭割りすると藤沢アナの退職金は…とゲスなことも考えることができてしまいます、いや、取締役としての慰労金だからアナウンサー生活ウン十年の会社員としての退職金じゃなくってよ。
経理の状況
財務諸表等はここに載っています。グループ会社を含めた連結決算と東北放送単体の決算があるので財務諸表も2種類あります。で、財務諸表とは何ぞや? 連結決算を表す連結財務諸表等に書かれているのは以下のものです。
- 連結貸借対照表
- 連結損益計算書及び連結包括利益計算書
- 連結株主資本等変動計算書
- 連結キャッシュ・フロー計算書
- 連結附属明細表
【連結貸借対照表】はその企業グループが持っている資産を左に、負債を右に並べて表にまとめたもの。右には負債だけでなく資本金や繰越利益をまとめた純資産の部もあり、負債の部と純資産の部の合計金額は資産の部の合計金額と一致することになっています。左右の合計が一致することから英語ではバランスシートと呼んでいるのでしょう。拙blog的には左下に当たる固定資産の項の中にある「投資有価証券」が前年度のほぼ半額に減っていることが気になります。
【連結損益計算書】は収入がいくら、支出がいくら、差引残高はいくらというやつです。前述のとおり支出に当たる販売費及び一般管理費が前年並みなのに収入に当たる売上高(売上原価と売上総利益)が昨年から大きく減ったため、差引残高にあたる営業利益が当年度はマイナス、つまり営業損失を計上しています。【注記事項】というところに販売費や一般管理費の内訳が書いてあるのですが、どちらとも人件費は減っています。しかし減った分だけ減価償却費が増えているのです。ラジオの出演者を局アナだけにしたからと言って赤字化を免れられるほど甘い世界では無いということなのでしょう。しかしちょっとした身近な集まりの会計報告と企業決算が異なるのはここからです。営業利益のあとに営業外収益という項目が出てきます。利息とか配当金とか家賃とか、持分法による投資利益というのもあるのですがこれが大きく減っています。営業外費用というのもあります。前年度はテープ素材ファイリング化費用というものに掛かったようで、当年度は支払利息が増え投資有価証券評価損も計上されていますが、前年度ほどの額ではありません。この営業外収支を含めた差引残高が経常利益になるのですね。当年度はこれもマイナスです。ところがもう一段足し引きがあります。特別利益と特別損失です。
特別利益とは何ぞや。4種類計上されており、一つ一つに脚注が付いています。 拙blog的に興味があるところなので書き写します。
- 投資有価証券売却益
- 前年度 20,194・・・ 仙台CATV(株)株式の売却益である。
- 当年度 1,897,865・・・(株)エヌ・ティ・ティ・ドコモ株式の売却益である。
- 補助金収入
- 前年度(計上なし)
- 当年度 30,827・・・ラジオSTL回線設備の更新費用に係る補助金である。
- 関係会社清算益
- 固定資産売却益
- 前年度 41
- 当年度 2,571 ・・・機械装置及び運搬具1,844、工具器具及び備品727
ドコモ株は私がググって見つけたところでは1株3900円するはずなのだが、だとすると単純計算で1,950,000だから額に差があります。なんでだろう。でも前年度の有価証券明細表で貸借対照表計上額は1,688,500とのことなのでそれよりは高く売れたことになります。仙台CATVは前々年度のそれには4,805とあるので20,194というのはかなり高く買い上げてもらったことになります。仙台シティーケーブルは分からないんだけど、清算益が出たのならよかったよね。来年度の有価証券報告書に清算益は計上できるのだろうか…?
これらに対して特別損失がありまして、固定資産除却損とか減損処理とか(東北映画制作とtbcビジョンの設備に関するものなのかな?)、社屋移転関係のもろもろ、投資有価証券評価損(前年度、当年度とも(株)ベガルタ仙台の評価損だそうだけど、これに伴い有価証券明細表で貸借対照表計上額は23688→10875→2!と、ここで計上された分だけ減っている)とかなんとかかんとかで額はかなりなものなのですが、何せドコモ株の売却益がでかいので差引残高、税引前当期純利益はプラス。ここから引かれる税金もかなりの額なのですが(計算上約91.1%が税金で持って行かれている!!)最終結果となる当期純利益は無事プラスを確保できたということになります。
で、最後の最後に『非支配株主に帰属する当期純損失(△)』というのがあって『親会社株主に帰属する当期純利益』は少し増えます。この辺のからくりについて触れたものが【連結包括利益計算書】ということになるのかと思うのですが、そこに書いてある『その他の包括利益―その他有価証券評価差額金』というのがとてつもないマイナスなのです。実はこの項目は貸借対照表にもあります。貸借対照表の右下、純資産の部は資本金と利益剰余金が載っている場所ですが、そこに『その他の包括利益累計額―その他有価証券評価差額金』があります。当年度は前年度と比べて大幅減となっていますが、そのマイナス幅がほぼ【連結包括利益計算書】に書かれている当年度の値に近くなっています(金額が千円単位の表示なのでわずかなずれが生じています)。その他有価証券評価差額金というのはすぐに売るつもりはないその他有価証券について時価が購入原価をどれだけ上回っているかを表しているという理解でいいですよね。株価は基本的に上昇しているような印象があるのですが東北放送が所有している株式についてはそうでもないのでしょうか。貸借対照表ではドコモ株売却で左下、固定資産の中の「投資その他の資産」が大幅に減っているため左右のバランスをとるために右下の純資産の部に大幅なマイナス項目を作る必要があるという解釈をしたらまつがいになる? 【連結包括利益計算書】ではせっかく上がったはずの純利益からその他有価証券評価差額金が大幅なマイナスを差し引いて包括利益も大幅なマイナスという結果になっています。脚注を見ると本来のマイナスは△1,409,901千円。ただ、これに対して『税効果』が427,056あり『税効果調整後』△982,844になります。その他有価証券評価差額金には税効果会計を適用する必要があり、それは企業会計と税務会計のずれがあるからだというのです。が、いくつかのサイトをググって眺めたのですが正直ピンと来ていません。
【連結株主資本等変動計算書】は貸借対照表の右下、純資産の部の中味がこの1年間でどれだけ変動したかを表すものと言ってよいかと思います。資本金はもちろん変わらないですが、利益剰余金は前年度の期末から当年度に支払われた配当金が引かれ当年度の純利益が積み上げられています。当年度には『連結子会社株式の取得による持分の増減』という項目ができています。東北映画制作の資本金を増やした分かとも思うのだけど連結決算なのだからそこはプラマイゼロだよな。その他有価証券評価差額金が大幅に減ったことはこの表にも登場します。ところで【連結包括利益計算書】【連結株主資本等変動計算書】とも非支配株主という単語が出てくるのですが、東北映画制作、tbcビジョンとも2社とも赤字のはずで、東北放送と河北新報が出資しているので出資割合に応じて赤字を被ることになる、その河北新報の負担分が非支配株主に帰属する当期純損失。東北放送は子会社の赤字分より東北放送単体の黒字のほうが多いので親会社株主に帰属する当期純利益。という解釈であってますかね。
【連結キャッシュ・フロー計算書】では前述したかな、現金の流れが3つの観点からまとめられています。営業活動によるキャッシュ・フローでは税金に関わる項目や本社移転損失引当金の増加、固定資産除却損も増えていますが、けた違いに数値が大きいのが何度も出てきますが投資有価証券売却益です。この項目は利益が上がると△表記になるので一瞬マイナスなの?って思ってしまいます。投資活動によるキャッシュ・フローでは有形固定資産の取得による支出が前年度の半分程ながらかなりの高額です。これって新社屋の建物や設備にそれだけ掛かったということですよね。投資有価証券の売却による収入が1,950,000、単純に50万株×3,900円になっています。やっぱりドコモ株は1株3,900円だったようです。この項の前年度の額が25,000とあるから仙台CATV株は25,000÷500=50千円、額面5万円だとしたら額面通りだけど貸借対照表計上額は4,805なのだから実情は額面の1割の価値も無いことになってしまう。累積赤字が31億にまでになったのだから仕方のないことか。財務活動によるキャッシュ・フローでは配当金の支払いや借入金の返済が書いてあります。借金を返すと△で表示されます。40億借りて12億ほどを返したことがわかります。
このあとの脚注が長いのです。退職金に関することや 繰延税金資産とか長期借入金とか。気が付けば有価証券報告書が出てから約1か月、私の体力気力があるときはずっと画面とにらめっこ状態なわけで、ときたま前後の文章の整合性を取るためにこの拙文を読み返しているのですが、もはや何を書いていたのか分からなくなりつつあり…。
資産債務除去関係の脚注より『 当社グループは、親会社の営業事業所及び東京支社、子会社の本社の建物賃借契約に基づき、退去時における原状回復に係る債務を有しているが、当該債務に関連する賃借資産の使用期限が明確でなく、親会社の営業事業所及び東京支社、子会社の本社の移転の予定もないことから、』 待てーい!東京支社引っ越したただろ! 当年度でなく翌年度に計上するつもりか?
重要な後発事象として連結子会社間の吸収合併 、tbcAzの誕生について触れた項目がありまして、『東北映画制作株式会社を吸収合併消滅会社とする吸収合併である』と明記されています。
財務諸表には子会社を含めた連結と東北放送単独の2種類があります。単独の 財務諸表ほうには貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書があり、附属明細表、その中には東北放送が所有している株式や債券が一覧できる有価証券明細表や有形固定資産等明細表、引当金明細表があります。
あまり鞭を打つのもよくないのかもしれないけど、脚注を眺めていると、まずは売上原価の内訳で番組費が昨年比の83.9%。切り詰めているということですよね。事業費は半額以下、自社事業がそれだけ中止に追い込まれたということなのでしょう。それら以上に減価償却費が倍以上に増加しています。一般管理費の内訳でも役員報酬も人件費もマイナス、身を切る改革をしていると考えてよいのでしょうね。ここでも減価償却費と租税公課がそれ以上に増えています。有価証券明細表に関してはドコモ株が無くなったので金額的にはTBSホールディングス(東京放送ホールディングスから社名変更していたのね)、株数的にはTBSホールディングスとじもとホールディングス(仙台銀行の持株会社)が多いという感じです。仙台空港鉄道の計上額が0になっているのが気になります。コロナのせいで3年ぶりの赤字になったようですが、2016,17年度に投資有価証券評価損を計上して0という扱いにしているようです。なお、大した株数は持っていません。有形固定資産等明細表では新社屋関連の資産の増加、旧社屋関連の資産の減少のほかに旧東京支社関連の建物や備品の資産の減少が計上されています。あとで別エントリを上げるつもりですが新東京支社は系列他社と共用のオープンスペース! なので経費削減になるのだそうです。
提出会社の保証会社等の情報
東北放送に関しては『該当事項はない。』の一文のみ
監査報告書
連結財務諸表、東北放送単独の財務諸表それぞれについて、監査のプロとしてこんなポイントに着目したというところが書いてあり、私はプロとしてきちんと監査をしていますという宣誓がされている、と書いたら何読んでるんだって怒られるかな。そういう意味の文章に私には思えました。もちろん監査の結果適正であるということは述べられています。
代替書面・添付文書
EDINETには有価証券報告書、監査報告書のほかに付録として(?)3つの文書が付いています。私のブラウザでは別画面でpdfファイルが開きます。
ひとつは株主総会招集通知。株主総会のご案内です。新社屋1階杜のホールで行われたようです。取締役や監査役の選任といった議案と事業報告で、結局は有価証券報告書とほぼ同じ内容になります。公認会計士さんの監査報告の後に監査役たちからの監査報告が付いているところが大きな違いかなと思います。
ふたつは株主総会決議通知。株主総会の結果、事業報告が行われ議案は原案通り可決されたこと、配当金を送金したことがつづられています。
最後は定款。株主総会とか取締役会とかの企業としての大きな決まり事の条文が並んでいます。
そもそも有価証券報告書って?
Wikipediaには次のような説明がされています。
有価証券報告書(ゆうかしょうけんほうこくしょ)とは、金融商品取引法で規定されている、事業年度ごとに作成する企業内容の外部への開示資料である。略して有報(ゆうほう)と呼ばれることもある。
「金融商品取引法第24条」に根拠があるというのですが、wikipediaで『次のような株式会社には、各事業年度終了後、3か月以内の金融庁への提出が義務づけられている』という4つの類型のうち東北放送株式会社におかれましては、株式を上場もしていなければ店頭公開もしていません。有価証券届出書提出会社、これは面倒そうだから後に回します。もうひとつは『過去5年間において、事業年度末日時点の株券もしくは優先出資証券の保有者数が1000人以上となったことがある会社(ただし、資本金5億円未満の会社を除く)』ですが、東北放送の株主は378名とのことで、5年前は1000人以上となったことがあるとも思えません。
さっき飛ばした有価証券届出書(ゆうかしょうけんとどけでしょ)とは、『有価証券の募集や売出しを行う場合などに、その募集または売り出しを行おうとする発行会社が内閣総理大臣に宛てて提出する開示資料のこと』なのだそうですが、東北放送株式会社が債券を発売したことがあったのでしょうか。というわけで、どうして東北放送が有価証券報告書を公表しているのか私にはわかりません。東北財務局のサイトに『東北財務局で閲覧できる有価証券報告書等の提出会社一覧』というページがありますが、アイビーシー岩手放送、青森放送、秋田放送、岩手日報社も有価証券報告書が公表されているようです。山形放送や福島県の放送局は無いようです。Wikipediaの『東北の有価証券報告書提出会社一覧』には秋田テレビ、エフエム青森、ラジオ福島もあるという話なのですが、昔はあったのでしょうか。
決算公告は株主総会が終わったら官報もしくは普通の日刊紙に貸借対照表の要旨と当期純損益(大企業は損益計算書の要旨)を載せることになるのですが、官報だって掲載料金を取ります。なので仙台放送は自社ウェブサイトに過去5年間の貸借対照表の全文と当期純損益を掲載するページを設けることで代用しています。官報に載せない場合はそうする決まりになっているみたいです。