ひどい誤解

今年上期のお祓いになるような小ネタをいくつか。

AMのFM化?

NHKのニュースキャスター、スポーツキャスターとして知られた大越健介記者が6月30日付で定年退職されたのだそうです。
そのことを報じる日刊スポーツのwebの記事。
NHK大越健介キャスター「英語の勉強したりして自分磨く」6月で定年退職 - 芸能 : 日刊スポーツ
『大越氏は同日出演したラジオ番組で、フリーの放送ジャーナリストとして活動することを示唆した。』というのですけどね、問題はそのラジオ番組です。
『大越氏は同日午前、レギュラー出演する同局FMラジオ番組「三宅民夫のマイあさ!」(午前7時25分)内の「大越健介の現場主義」のコーナーを卒業する意向を放送内で発表。』
大事なことだから引用文に着色しましたよ。もう一度引用しますよ。字の大きさを大きくして引用しますよ。
FMラジオ番組「三宅民夫のマイあさ!」(午前7時25分)』
三宅民夫のマイあさ!」がNHK-FMでも放送されていることそれ自体は間違いではありません。ただし、FMで放送されているのは7:00-7:20の間、以前なら「けさのニュース」という番組名だった朝7時のニュースの部分だけなのです。
三宅民夫のマイあさ!」は基本的にはFMではなくAMのラジオ第一で6:40-8:28に放送されている番組で、朝7時のニュースはラジオ第一とFMの同時放送なのです。7時のニュースのあと7:25から放送される大越さんのコーナーはFMでは放送されません。FMでは7:25-9:15に「クラシックカフェ」の再放送(本放送は8日前の14:00-15:50)が放送されているのです。
AMのラジオ第一の番組のコーナーを、全体のうち一部だけがFM放送である番組のFMでは放送されないコーナーのことを紹介するのに『FMラジオ番組』と紹介するのはどういうことなのか。日刊スポーツ的にはNHKのAMラジオはすでにFM化されたのか。NHKはどこぞの在京AMラジオ局みたいにFMラジオ局になりたいなんて言っちゃいないはず。
三宅民夫のマイあさ!」の番組ホームページを念のために見てみると
マイあさ! - NHK
『ラジオ第1 毎週月曜~日曜 午前5時 / FM 毎週月曜~日曜 午前7時』
まさか、この記述を見た日刊スポーツの記者は「三宅民夫のマイあさ!」はラジオ第一では5時からやって7時からはFMでやっている番組なんだ、と誤解したのではあるまいか。言い方を変えれば、この記者は実際の番組を聴いたことが無い。
この番組は番組ホームページの写真で三宅民夫さんの左隣に写っている男性、田中孝宜アナが「マイあさ!」というタイトルでラジオ第一で月曜から金曜の5時から6時半まで担当し、「ラジオ体操」を挟んで6時40分になると田中アナはサブに下がりメインが三宅さんになって「三宅民夫のマイあさ!」に番組名が変わるのです。そして朝7時のニュース(全国放送20分+ローカル5分)の部分だけFMでサイマル放送されているのです。土日は朝5時から8時まで通しで畠山智之アナが担当し三宅さんは登場しません。土日も朝7時のニュースはラジオ第一とFMの同時放送です。7時になるとFMでもやる(実態は朝のニュースしかやらない)けどラジオ第一で放送されなくなるわけでは無いのです。
これは放送開始時刻しか書いていないNHKの書き表し方にも問題はあると思います。「放送予定」の欄を見れば何時までだかわかるだろと言われればそうなのだけど、分かってもらえるだろうか。FMでやるのは20分だけだ、あとはラジオ第一だけだと分かってもらえるだろうか。涙で文字がにじんでいたなら、わかってください。いや、きれいなパソコンの画面にはっきりとした文字だから逆に分かりにくいかもしれません。
この日刊スポーツの記事が松本人志さんの言う「こたつ記事」で無いことを祈ります。

津波で停波なければ犠牲者は減らせた?

富谷・高屋敷に工業団地整備へ - みむめもーど
に、あさってもしくはおとといなコメントを書いてきたtozu02さんとのやり取りで彼が書いてきたコメントから抜粋。

tozu02 2021-06-30 13:02:03より

あのまま東北放送ラジオ送信所が富谷のままなら東日本大震災津波の犠牲者は減らせたんですけどね

私自身は震災直後は家の中で倒れたものの片づけとかしてて実はラジオを聴いていなかったりします。なのでWikipediaじゃないけど第三者が書いた物をと思ってググったら、東北大学文学部が出している「考えるということ」というブックレットが引っ掛かってくれました。2012年6月に出たらしい第7号では「シリーズ企業との対話・社会との対話6」として東北大学文学部出身である東北放送の氏家悟取締役営業局長(当時)のインタビューが載っています。
https://www.sal.tohoku.ac.jp/media/files/research/pub/kangaeruVol7.pdf
この3ページに震災と東北放送の対応が時系列でまとめられています。ラジオに関係ありそうな部分だけ抜き出します。

  • 3月11日
    • 14:46 緊急地震速報
    • 14:48 地震放送
    • 14:50 大津波警報呼びかけ
    • 15:03 EWS(緊急警戒速報)発信
    • 15:06 津波への警戒/余震への注意呼びかけ/震度情報のお知らせ
    • 15:21 女川情報カメラ
    • 15:25 津波への警戒/余震への注意呼びかけ/震度情報のお知らせ
    • 15:57 仙台空港情報カメラ
    • 16:12 津波への警戒/余震への注意呼びかけ/震度情報のお知らせ
  • 3月12日
    • 4:37 荒井ラジオ送信所停止
    • 5:30 八木山非常用ラジオ送信機から電波発射
    • 早朝 鳴子ラジオ中継所、電池容量枯渇により停波
    • 志津川ラジオ中継所、電池容量枯渇により停波
    • 10:00頃 NTT八木山の通信ダウン 本社内の通信の多くが停止
  • 3月15日
    • 1:00頃 NTT八木山通信回復
    • 12:50 荒井ラジオ送信所復旧
  • 3月18日
    • 14:30 気仙沼ラジオ中継所、電池容量枯渇により停波
    • 17:00 荒井ラジオ送信所復電
  • 3月22日
    • 6:29 CMなしでの24時間放送体制終了

東北放送IBC岩手放送ラジオ福島と違って震災時の状況を本にまとめてはいないはずですが、『東日本大震災の記録~3.11宮城~』というDVDを出しているそうで、これが出典になっています。
何が言いたいかというと、停電で誰が見てるんだ状態だったテレビだけでなくラジオでも津波への呼びかけはしていました。津波が来た時点でTBCラジオの送信所、中継局は動いていました。停波するのは震災の翌日になってからです。
すなわち『富谷のままなら東日本大震災津波の犠牲者は減らせたんですけどね 』などというのは全くの誤解です。荒井送信所は津波に襲われた時点でもまだ生きており、送信所が荒井だったから津波の犠牲者が多かった富谷だったら少なかったなどということはありません。結果論ではありません。
もしホントは津波が来る前に停波していたんだとおっしゃるのであれば御説拝聴いたします。
ただ、もしAMラジオの送信所が富谷町(当時)にあったなら、国道4号沿いでもありますし、ラジオの技術職員は全勢力を富谷の送信所の予備電源を動かす重油を集めることに振り向け、富谷だけは停波をさせずに済ませることができた、かもしれません。そうすればAM送信所は災害時に停波する恐れがあるからFM補完放送を始めるのだという言い訳を与えずに済むことができ、FM補完放送はお金のないAM局が送信所の設備更新をケチりたいからやるのだということが暴けたかもしれません。

金に困って株売った?

他人の悪口ばかり書くと『嫌がらせか? 実生活に不満な心理の現れ??』とか言われます。
ここからは私の過ち。
在仙放送局の決算・人事など 2021 - みむめもーど
仙台放送決算短信の記事を書き写したとき、『NTTドコモ株の売却益などで純利益は過去最高となった。』と書いてあったことに対し私は『※もう判で押したような見事なコロナのせい。驚いたのはこれを株の売却でリカバーしたということです。仙台放送がNTTDoCoMoの株を持っていたとは知りませんでした。』と感想を書きました。
確かに私は驚いたのですけどね、別に仙台放送は赤字になったからNTTドコモ株を売ったのではないのです。これが私の誤解。

菅首相の息子が東北新社に居るからって総務官僚が接待された許せない、NTTとも癒着してたのかなおさら許せん、と報道を聞きかじって怒りのボルテージを上げるのですけどね、なんでNTTは会食をセッティングしたわけ? ケータイ料金を下げなさいよという政治的圧力のせい? ほかにもあるでしょ。NTTドコモの子会社化。
そりゃドコモは最初っからNTTの子会社だろうよ。それはそうなのだが、ただの子会社ではなく株式を100%持つを完全子会社化を目指したのでした。そのために昨秋、株式の公開買い付けをしたのです。
1株3900円だそうです。
公開買い付けで9割を超える株式を集めることができたため、上場廃止となりドコモ株を売りたかろうが売りたくなかろうがすべての株式は1株3900円でNTTが買い上げることになったのです。というわけで仙台放送東北放送(過去の有価証券報告書に50万株持っていると書いてあった)は公開買い付けに応えて売却したのだと思います。

仙台放送は自社ウェブサイトに決算公告のページを設けており、過去5年分の貸借対照表を見ることができます。
仙台放送/会社案内/決算公告
で、どこの項目を見ればいいんだろう。
貸借対照表って資産の部と負債の部があるじゃないですか。
資産の部を見ると、昨年度は流動資産の項にあった『有価証券 95,441,750』というのが今年度には無いのです。一瞬これがドコモ株かと思ったのですが経常利益が72百万円なのに純利益が24億7百万円なのだからこの額では桁が2つ足りません。「現金・預金」と「その他の流動資産」が昨年比でかなり増えていて、流動資産は17億円ほど増加しています。
固定資産の項では「投資その他の資産」が大きく減っているのだけど、その内訳で「投資有価証券」が昨年比ほぼ40億500万円のマイナス、逆に「長期性預金」がほぼ30億円のプラス。これは40億円超の有価証券を売って10億円ほど何かに使って残りの30億円を預金したと考えればよいのでしょうか。仙台放送はドコモ株だけを売り買いしているわけでは無いでしょうが40億5千万円がすべてドコモ株と仮定すれば100万株以上持っていたことになります。ドコモが上場されたのは1998年11月だそうで、あの頃は仙台放送は視聴率トップだったかなぁ・・・。
負債の部を見ると「未払金」「未払法人税等」が大きく増え負債合計は6億6千万円ほど増えています。純資産の部を見ると資本金は2億円で他局と比べてかなり控えめなのね。ここでは「利益剰余金」が昨年比23億8千万円ほど増えているのだけど「その他有価証券評価差額金」が18億9千万円ほど減っているのです。これは株を買った時の値段と時価の差が少なくなったということなんですかね。
ところで、貸借対照表のどこを見れば経常利益がいくらなのか分かるんだっけ?
(↑財務諸表の読み方がまるで分っていないwww. たぶんこの話は続きます。)