(再掲)AM局がFMに移行するって?

本稿は拙blogがはてなダイアリーにあった頃に書いて2013年3月1日付でアップしたものです。
当時の私の理解に基づいているので2021年6月の時点から見れば誤りであること、その当時から私が誤解していることがあるかもしれません。また、文中の「昨日」は2013年2月28日になるはずです。書き直さずに当時のまま再アップしますので、ご留意のうえご笑納ください。
(再掲ここから)


私の記憶がたしかならば、昨日お昼の「ランチボックス-L」内の河北新報ニュースで、東北放送の一力敦彦社長がしゃべってたと思うんだけど。今日の新聞を読んでから何か書こうと思って(てゆーか昨日だらだらと書きすぎて文章が長くなってしまったので)今日の河北新報を探しているんだけどどこにも載っていない。
昨日iモードのニュースを眺めていて、『AMラジオ局、FM化検討 デジタル化、聞きにくさ解消』という見出しに仰天した。朝日の記事はPCでは途中までしか読めないけど、さいわいiモードの日刊スポーツのサイトに加入しているのでケータイで朝日の記事が最後まで読めました。何が仰天かって、書き出しが

 文化放送、TBSラジオ、ニッポン放送などのAMラジオ局が、FMラジオへの移行を検討していることが27日、わかった。

在京3局名指し。
たしかマスメディア集中排除原則ではテレビ局はFM局との兼営が禁止になっていたはず(改正されたんだっけ?)。もしかしてラテ兼営局がラジオを分社化してるのってFM兼営への抜け道?
すでにいくつものラジオ好き、もしくはラジオ業界人のブログでさまざま書かれていて、在京AM局がFM化するということは先発FM局やテレビと同じあの塔から電波を発するということでリスナーにとっても利便性が増すという考え方もあるみたい。
でも域外に住んでいるものとしてはほぼ他県の局は聞けなくなると考えてよいわけで、なんでFMなんだよと思う。それにEスポで中国の電波に攻めてこられたらFMの特性上(弱いほうの電波はかき消される)地元でも聞けなくなる事だって出てくるに違いない。
朝日の記事のタイトルにある『聞きにくさ』とは、高層ビルが電波を遮るなどという受信環境の悪化。でもそれは「Radiko」スタートのときも口実だったような。AMステレオ放送は実施した局の大半が止めてしまったわけだけど、Radikoはステレオ放送だしFMになったらもちろんステレオ放送。
けど首都圏ってFMの周波数がほぼ埋まっていてコミュニティ局の新規開局が絶望的だって話じゃなかったっけ。そこで地デジ化で空いたかつての1チャンネルから3チャンネルの枠をAM局のために使おうということになるらしい。さっそく954KHzが95.4MHzになるなんて説も出ているみたいだ。
しかしそこの枠、V-Lowってデジタルラジオマルチメディア放送をやるって話で、現に東北放送が試験放送をやっているし、FM東京なんて何県の局なら何万円でやれるよなんて具体的な金額まで公表してなかったっけ。くしくも今日「FNNスーパーニュース」からの卒業が発表された葉山ビーチFMの木村太郎さんも防災に役立つって積極的に取り組んでたような気がするし。
デジタルラジオについてはFM東京が積極的に旗を振っているのだけど、足並みがそろっていないらしく、読売では2月23日の時点で記事にしていたらしい。その名もズバリ『ラジオのデジタル化、全国規模での実施困難』。なぜ困難か、金がかかるから。

 ラジオ業界は、難聴対策に有効などとしてデジタルラジオの開始を検討してきたが、実施には新しい端末の普及に加え、総額1200億円の設備投資が必要。深刻なラジオ離れの影響で、苦しい経営が続く民放局の中には難色を示す局が多く、NHKも消極的だ。

テレビも地デジ化で大規模な支出を強いられたようだし、テレビより経営規模が小さく苦しいラジオでデジタル化は無理というのは、そりゃそうだろうな、という気はします。
まぁ聞く方にしたってデジタルラジオは当然新型受信機、たぶん多機能でそれなりの金額がするものを買わなければならず、めんどい。ただのFM局であれば1〜3chが入るラジオ(FMの目盛りが90じゃなくて108まであるやつ)を持っている人ならいける。まだ財布に優しい。でもAMラジオのほうがFMより電池の持ちがいいし。何でAMをやめちゃうの?

そこで出てきた理由が、送信局の更新。『AM局の半数は2020年度までに老朽化した送信所の更新時期を迎え、設備投資額を抑えられるFM移行を目指す局は増える可能性もある』のだそうだ。AMステレオ放送をやめた理由も設備更新じゃなかったっけ? 要は金がないからAM局やめますってことか、AMの電波を出すのは金がかかるけどFMの電波なら安く上がりますって。
「放送ネットワークの強靱化に関する検討会(第1回)」という総務省の会議の資料がupされているのですが、そのうちの『資料6 放送ネットワークの現状について』の16ページ、「民間AMラジオ送信アンテナの問題」より。

AMラジオ送信所が大規模となる理由
•AMラジオが使用している中波は波長が長いため、電波を効率よく送信するために大規模な送信アンテナが必要となる。(民放全47社の親局送信所の平均地上高:約110m)
•AMラジオの送信所では、電波を効率よく放射するため、銅線を放射状に埋設している。このラジアルアースは、100m〜150m程度の長さが必要となるため、広大な敷地が必要となる。
・移転して整備した場合、関東広域局の親局の100kWクラスだと、約20億円を要するとの試算例あり(新規土地取得費、近隣対策費等を除く。)。

20億ですか。テレビ兼営なら、テレビを持ってる親会社なら出してくれるだろうか。AM単営局なら無理?
東北放送をはじめ海に近いところにアンテナを立てている局は多い。TBSラジオだと競艇場のそば、海でなければ川のそば。それはアースを取る必要があるからだったはず。先にあげた資料の14ページ「民間AMラジオ送信所の安全性」でさらっと挙げている問題点『海や河川の近くに設置されている場合が多く、こうした送信所は、津波や洪水の被害を受けやすいと考えられる。』
たしかに東北放送はAMラジオの荒井送信所が津波の被害を受けました(停波の直接の原因は予備電源の燃料が尽きたこと)。これがFM・テレビであれば仙台だったら大年寺山、関西だったら生駒山というように高いところから降り注ぐように電波を飛ばしている。たぶん津波や洪水の被害は受けない。それもAMよりFMのほうがいいという根拠なのだろうか。
ところでなんて名前の会議でしたっけ。「放送ネットワークの強靱化に関する検討会」。これって自民党が訴えている“国土強靭化計画”の一環? つまり復興予算がAM局のFM化に使われるわけ?
会議は東北放送の一力社長や文化放送の三木社長らがメンバーになっていて7月まで続くようです。今後も何か報じられるたびに何か書きます。


(再掲ここまで)
なお、総務省「放送ネットワークの強靱化に関する検討会」の議事概要は今でも読むことができます。
総務省|放送ネットワークの強靱化に関する検討会|放送ネットワークの強靱化に関する検討会