四国のラジオ局あれこれ

愛媛県のメディアについてうっかり書くとものすごい長文のコメントが寄せられたりすることがあるので慎重にならなければならないのですが、ちょっと話題が溜まったのでまとめておこうと思います。

山陽放送持株会社化して子会社は?

岡山市に本社がある山陽放送が4月1日付で法制上の認定放送持株会社というものになります。何とかホールディングスってやつのことです。
山陽放送は「RSKホールディングス株式会社」というのになりまして、新たにできる子会社「山陽放送分割準備株式会社」がテレビとラジオの放送免許を継承し「RSK山陽放送」となります(アルファベット込みで会社名)。
おやっと思ったのが、関係会社となる放送事業者として「エフエム高松コミュニティ放送株式会社」と書かれていたことです。
岡山の会社が高松のコミュニティFMを傘下に置くのは、テレビ放送では岡山と海を挟んだ香川は2県で1地域なのだから何の問題も無いのですが、「エフエム高松コミュニティ放送株式会社」、長いので 愛称の「FM815」で略しますが、この局って山陽放送と何か関係あったっけ?
この局の経緯は複雑です。
1996年に「あなぶきんちゃん」でおなじみ穴吹工務店の出資で開局しました。当時の愛称は「MAN de GAN815」(マン・デ・ガン815)。すぐに「高松シティエフエム」(愛称は「FM MARINO」(エフエムマリノ))が開局し1市2局状態になります。「FM MARINO」はWikipediaには『瀬戸内海放送(KSB)との結びつきが強かった。』とあります。この「FM MARINO」は2005年「MAN de GAN815」に吸収される形で閉局します。ここから「MAN de GAN815」は「FM815」になります。
2001年以降「FM815」は穴吹工務店の子会社である中間持株会社の「ACカンパニーグループ」が大株主でした。ところが2009年、穴吹工務店は経営破たんしてしまいます。2010年に経営権は穴吹工務店から家庭教師のトライでおなじみトライグループに委譲されました。スタジオも穴吹工務店本社ビルから常磐町商店街に移動になりました。Wikipedia穴吹工務店の年表を見ていると2000年に『“穴吹工務店トライグループと提携”.』なんて書いてあります。どんな提携か分かりませんがそういう事情があっての経営譲渡だったのでしょう。
局のサイトを見ると現在の社長さんは株式会社トライグループ 専務と書いてあります。出資者としてトライグループ穴吹学園Wikipediaによると穴吹工務店とはほぼ関係が無くなっているらしい)、銀行や自動車ディーラーがいろいろ、瀬戸内海放送もあります。しかし、山陽放送の名前はありません。
山陽放送は「FM815」の経営権をこれから持つのでしょうか?

余談ですが、エフエム香川の大株主について

上にも書きましたが、「FM MARINO」は瀬戸内海放送との結びつきが強かったのだそうです。今でこそ瀬戸内海放送エフエム香川の親会社ですが、これっていつからなんでしょう? まぁ最初からなんでしょうけど。
Wikipediaに載っている1992年当時の大株主をググると岡内信三氏(岡内勧弘堂(現・四国アルフレッサ))、小塙直氏(加藤汽船)、太田賀久氏(高松帝酸)、木村寿雄氏(四国機器)、杉山圭三氏(たぶん紙の杉山)、 山田徹郎氏(たぶん高松市議会議長)、長島修氏だけはどうにもつかめなかったのだけど他の6人は高松市にかかわりのある企業名や役職が引っ掛かってきたのでたぶん間違いないと思います。
2003年になると、岡内氏と小塙氏の間に宇高国道フェリーと四国観光物産が入ってきます。宇高国道フェリー、四国観光物産、小塙氏の2,3,4位株主の合計は約16%で加藤汽船系が筆頭株主的になります。太田氏以下の5名の名前は無くなります。木村氏以下の4名は1992年時点では3.7%ずつの株式を持っていたのですが、この3.7%という全く同じ数の株式を朝日、読売、産経、日経の4新聞社が持っています。この数字は偶然なのでしょうか。
総務省電波利用ホームページの「一般放送事業者及び電気通信役務利用放送事業者の議決権保有状況」の古いものを調べると、平成19年5月1日現在とあるから2007年かな、この時点でエフエム香川の欄はまだ空欄です。平成20年11月1日現在とあるから2008年になると『(有)サービスプロフェッショナル 20.9』という名前が出てきます。ググるとこの住所、電話番号が宇高国道フェリーと同じ(笑)。平成22年10月1日現在ということは2010年には(有)サービスプロフェッショナル に加えて『(株)セトナイカイサービス 20』という名前が登場しますが、この本社も宇高国道フェリーと同じ(笑)。平成23年8月4日現在までそうなっていて、平成24年7月末現在だと今と同じ『(株)瀬戸内海放送 92.9』です。2011年から2012年の間に何かあったと思われます。何があったのでしょう。
それは減資です。文化通信にありました。

FM香川、3億減資で資本・準備金各1億に
2011年02月22日
 エフエム香川は、3月30日付で資本金を3億円減資して1億円とする。減資分の……

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この際にほとんどの株主は持ち株を手放し、瀬戸内海放送がたぶん累積赤字ごと引き受けたのでしょう。だからWikipediaによれば株主が4人しかいない。
この時期減資が流行っていたみたいで、

  • FMラ新潟3・5億減資、経営体制軽減化 2011年11月01日 (※FM新潟。8億→4億5千万)
  • FM大分、7.2億減資で資本金8千万円に 2011年12月14日
  • FM山形資本金8千万に、JFNで減資相次ぐ 2012年02月25日 (※8億→8千万)

と出てきました。ただ、Wikipediaを見た感じだと新潟や山形は金額が減るだけで株数は減らなかった感じです。大分はちょっと分かりませんが、経営状態によって株を手放させるかどうか違いがあるのかもしれません。

ついに全AM局がFM補完放送へ

何時かこの日が来ることにはなっていたのですが、もしかしたら来ないのではないかという気もしていました。
最後までFM補完放送への動きを見せなかったアール・エフ・ラジオ日本西日本放送高知放送の3社に対し、FM補完放送の中継局を設置するための「無線システム普及支援事業費等補助金(民放ラジオ難聴解消支援事業)」のお知らせが遂に出ました。ラジオ日本には1月31日付(関東総合通信局からのプレスリリースは2月6日発表)、四国の2社には2月27日付です。四国の2社が46番目と47番目、一番最後となりました。
3社とも補助金額は事業費の2分の1なので外国波混信とか地理的・地形的難聴ではなく一般的な都市型難聴の対策という扱いになります。ただその事業規模は高知放送が最も低額で、西日本放送高知放送の約1.5倍、ラジオ日本は高知放送の約3倍という規模。予算を立てて補助金を申請するわけですから当然どこにどんな規模で建てるか決定しているはずです。既設の地デジ送信アンテナに取り付けるならそんなに高額にはならないはずなので、ラジオ日本は送信所を新設することになるのでしょう。さて何処に建つのやら。高知放送が安上がりなのか西日本放送が頑丈な設備を作るのかは私には分かりません。
このあとは予備免許が下りて本免許が出るという流れになります。そして全局FM波が出るようになったからAM波は要らないねということになってAM放送は廃止へ向かう・・・いやだいやだ、そんな未来は嫌だ。

南海放送の機構改革で一言

西日本放送のサイトを見ようとrncと入力しようとして、間違ってrnbと入力し南海放送のサイトが出てきました。
眺めていたら1月11日付で機構改革のプレスリリースが出ていまして(実施は3月1日付)、

新時代に相応しいメディアや情報発信の放送モデルを確立するため、「ラジオ局」の名称を廃し、
インターネット部門の「ネット戦略室」および「広報視聴者センター」と一体化させて新たに
「メディア統括局」を設置する。

 ―『機構改革および人事異動について | プレスリリース | RNB 南海放送』より

南海放送ではラジオのことをメディアと呼ぶらしいです。
文春オンラインのインタビューで田中和彦社長が語っていた
そろそろラジオという看板を下ろしてもいいのかなって
という意向が動き出してしまったようです(ちなみに田中社長は局アナ出身でラジオの人気DJだった方です)。
冗談はさておき、テレビはテレビ本部、テレビ局の下にテレビ編成部と番組進行部、それに番組審議会事務局(報道や制作、アナウンス部はまた別の部局)。対してラジオはメディア統括本部、メディア統括局の下にメディア編成部、メディア制作部、メディア広報部ということになるようです。たぶん一般的にいうラジオ業務部がメディア編成部、ラジオ制作部がメディア制作部に相当するのだと思われます。