「ラジオマニア2018」レビュー

今年も8月29日に三才ブックスより「ラジオマニア2018」が発売されました。
すぐに買ってレビューを書かなくちゃとは思っていたのですが、買ったのは9月の半ばだったかな、で別冊付録「RADIO-MANIA handobook 2018-2019」の正誤を調べ始めたら「ラジオ番組表」誌とはデータが別物である(「ラジオ番組表」誌では正された過去のミスがこちらでは依然と残っていたりする、つまりデータが共有されていない)ことに気づいて愕然としたりして、気が付いたら今年も2カ月以上遅れてのレビューになってしまいました。

表紙はTBSラジオのスタジオに置かれたTivoli Audio(以下チボリと表記します)社製のラジオ「PAL BT」。なぜTBSラジオのスタジオに置いてあるのかは分かりませんが。そしてよくよく表紙を見ると(Tiboli)と誤植orz.
巻頭グラビアの中にこの受信機の使用レポート「PAL BTを徹底的に試す!」という6ページの読み物があって大変エキサイティングでした。まずはあまり一般的に知られていないかもしれないチボリ社の説明から始まって、シンプルかつ美しい外観や商品名のBTが示すようにBluetooth対応であることや充電式、“対候性”(防塵防滴仕様になっているらしい)といった機能の紹介、そしてAM、FMとも受信感度はよいことが述べられています。ところが、『肝心の音質は微妙である』と言います。
そこで何と、似たようなSONYのラジオを持ってきて同じ放送を受信し、その音波を測定してみたのでした。すると「PAL BT」では高い周波数に余計な成分が検出されたというのです。アメリカでは伝説の技術者が創業したという会社の製品なのに技術的なところに問題ありというのはいかがなものかという結論には驚かされました(そういえば日本にもそんな会社があったような気が…それは別のところで特集されています)。ただ音質をどう評価するかは人の好みの問題もあるのでオーディオマニアでない普段使いで聞く分には問題は無いのかもしれません。
私はヨドバシカメラ仙台店で展示されているチボリ社の製品をダイヤルを回してみて、おぉこれがwebサイト(https://monotooto.com/)で紹介されている「5:1 ダイヤル」かと感動した覚えがあります。独特の感触でこれが正確なチューニングを可能にしているのだそうです。でも音は聴いたことが無いな。「PAL BT」についてwebサイトには「フルレンジドライバー」とか「多層セラミックIFフィルター」とか音にこだわっているようなことが紹介されているのだけど。そして、高いんだよなぁ。(「PAL BT」は税抜き29800円)買うかと聞かれたらちょっと迷う。


ちょっと話がそれました。表紙をめくると表紙と同じような写真があって、『どこにも載っていない ラジオがもっと楽しくなる情報あります』と書かれています。通読して見て実際そうだなと思いました。それはこれから述べますが、それよりも表紙裏に載っている広告、上柳昌彦著「定年ラジオ」が気になります。うえちゃんが昨年定年を迎えたときに前立腺がんが見つかったというお話です。もちろん定年までのアナウンサー人生についても述べられているそうです。実は本書の最後のほうにうえちゃんのこぼれ話が3ページ載っています。

どうも話が進んでいきません。一枚めくって目次を見ます。ラジオと言ってもラジオ番組、ラジオ受信機、受信機って言っても聞くだけでなく作ってみたりもします。ラジオの幅の広さがこれだけでも垣間見れます。
それでは巻頭カラーページ。まずは「ラジオ番組解剖図鑑」。『今、一番“おもろい”番組!』としてABCラジオ土曜深夜の「霜降り明星のだましうち」から霜降り明星のお二人のインタビューとスタッフへのインタビュー。次に今やラジオ日本NEXT枠のエース「ベイビーレイズJAPAN大矢・高見のしゃべりスタ」*1の大矢さん、高見さんのインタビューとスタッフへのインタビュー。各番組4ページずつ。いずれも番組を聴いたことが無い人にもわかる用語辞典とコーナー紹介が付いていて番組の概要がつかみやすくなっています。
次に先ほど紹介した「PAL BT」使用レポート。その次にもうひとつの使用レポート「欧州の短波ラジオ10機種レビュー」。これ日本で普通に売ってるのかな? 筆者は『現地の家電量販店で買える短波ラジオ10種類を実際に購入し』たらしいです。マニアックだなぁ。ヨーロッパらしく(?)インテリアとしても楽しめそうですが、肝心の受信感度がいまいちだったりするものもあるようです。AC電源の電圧が日本と異なるので変圧器が必須となるそうです。
「最新クラウドラジオ活用術」。LISMO WAVEとかドコデモFMとかWIZ RADIOとか、radikoとか、そういうものについてのお話。スマートスピーカーに「OK,Google! TBS.」と呼びかけるとTBSラジオを掛けてくれるんだって? すげえ世の中になったなぁ。PCでスマホアプリが使えるようにするAndroidエミュレータってのがあるんですね、これを使うとPCでスマホ版のradikoが使えたりするんだそうです。radikoタイムフリーを録音できるソフトなんてのもあるんですね。余裕ができたら試してみたいと思います。


カラーページからモノクロページに変わって「第1章 全国のラジオを楽しむ」。
まずは河野虎太郎さんが独断と偏見で選んだ「ラジオマニアニュースTOPICS」。私はこのところ河野さんのtwitterを眺めていたのであぁこれ知ってるというものが多かったのですが、『和歌山放送、局から最も近いコンビニが閉店』というホントに知らなかったけどどうでもいいという情報まで網羅されています。そういえば東北放送会館(TBC本社)前のローソンが閉店したのは何年前だったっけ? 今年だったら記事になったのに。
お次は“今聴いておきたい”(表紙より)5人の局アナのインタビュー。「日高晤郎ショー」を受け継いだSTVラジオ吉川のりおアナ、全国の局アナでたぶん唯一若者向けの帯の夜ワイドを担当しているCBCラジオ永岡歩アナ、安住紳一郎の後継者(?)MBSラジオ福島暢啓アナ、ABCラジオ「よなよな…」水曜日で近藤夏子さんとのやり取りが評判のABCラジオ北村真平アナ、KBCテレビでは福岡の朝の顔であるKBCラジオ宮本けいすけアナ。それぞれのラジオへの取り組み方というかラジオ愛の形の違いが味わえます。
お次は「ラジオ業界用語辞典」。いわゆるピー音の放送禁止用語を隠すためではない本来の使い道が説明されたりしていて、勉強になります。
そして「唯一無二ラジオガイド」。この春スタートした問題作「洋二と明石の無口な二人」(STVラジオ)のようなそりゃ唯一無二だろうなというものから「スベル兄弟」(TBCラジオ)のようなものまで各局1番組ずつ…と思ったらIBC岩手放送とかラジオ福島が載ってない。唯一無二と呼べる番組が無いと判断されたのかな。


再びカラーページ。
恒例の「1局集中ガイド」今回はRCCラジオ(中国放送)。なのですが取材日が7月19-21日。水害から2週間というバタバタしているであろうことが容易に想像できる状態でのインタビューになってしまいました。“天才”横山雄二アナをはじめラジオパーソナリティの皆さんの災害報道に対する考え方もうかがい知れるようになっています。そうかと思えば日曜日に午前ワイド、午後ワイドを担当されている女性パーソナリティの対談は本誌にしてはちょっと異色な内容になっていたりします。
私にとっては倉田紗南ちゃんの中の人、おだしずえさんのお顔を初めて見ました。紗南ちゃんのパワフルさの一端を担っていそうに見えます。MBSラジオの番組表から名前が見えなくなったと思ってはいたのですが、RCCラジオで月-木の午後ワイドを担当していたのですね。現在は出身地である呉に住んでいて、水害で陸路が寸断されたときは呉からフェリーで広島に通っていたそうで。
余談ですが、若いころ東日本放送アナウンサーだった伊藤文アナとか本誌で紹介されないアナウンサーもいます。伊藤アナは仙台に居た時より広島に帰ってからのほうがだいぶ長くなりましたが、今般の水害報道でリポートしているのをテレビでちらっと見たことがありました。現在ラジオでレギュラーを持っていないのかと思ってWikipediaを見たら「歌のない歌謡曲」を担当しているのだそうです。
宮城つながりでもうひとつ余談。RCC、開局当時の名前はラジオ中国。その周波数は1260kcだったのだそうです(kc=キロサイクルは当時の周波数の単位)。東北放送と同じじゃないかと驚くのですが、このとき東北放送は1250kc。RCCは1962年10月に現行の1350kcになり、TBCは1968年4月に1260kcになったようなので重なったことは無いようです(例によってWikipedia情報。でもそうするとモスクワ放送との混信はどうだったんだという謎が発生する。これは本稿からは完全に脱線するので止めておきます)。
カラーページのもう一つの特集は「FMホームラジオの製作」。広島ホームテレビではありません。ラジオ受信機を作るのです。とはいってもイチから作るのは大変です。今回は市販のパナソニックのラジオの基板にDSPラジオICを取り付け、電圧計を利用して周波数を針の動きで表示する仕組みを作るなどをします。
実は後半にも同じICチップを用いた電子工作があります。私は電子工作の心得が無いので見るとやるとでは大違いということになるかもしれませんが、ラジオは聞くだけでなく作れる、市販のラジオを改造して別のラジオを作れるというのを知るのも楽しいものです。
カラーページの最後に不思議な銀色の箱? TOKYO FMが2年ぶりにサテライトスタジオをオープンしたという話題なのですが、そのスタジオは何とトレーラーハウスを改造したもののようなのです。銀座ソニービルの敷地を更地にして期間限定で公園化しているところに設置したようです。


再び白黒ページになります。
『第2章 受信に役立つ情報&テクニック』。まずは在京民放AM3社のFM補完放送はどこまで聞こえるのか、東北自動車道を北に走らせてみました、というレポート。埼玉県内でも電波状況が悪くなる場所があるみたいですが栃木県内でもイケるところはありそうです。3社のwebサイトに出しているエリア図は3社とも同じぼんやりとした楕円になっており、ホントはどこまでがエリアなのか分かりません。実走して調べてみたくなりますわね。北限を調べるなら常磐道と関越道もありますよ。
世界の短波放送の動向についての情報。10月から実施されているラジオNIKKEIの送信電波の見直し(リストラ)についても触れられています。
八木アンテナの威力を知る!!」と題したFM放送の受信レポート。東北帝国大学(当時)の八木教授と宇田さん*2が研究して開発したから八木アンテナといいます。先日亡くなられた西澤潤一さんが、本学の研究の成果が国内では顧みられず海外で実用化されその結果日本は戦争に負けたのだ、という演説を学生時代に何度か耳にした覚えがあります。まぁそれほどの威力があるわけです。FMラジオのロッドアンテナでは受信が厳しくても八木アンテナを接続すれば受信できるようにもなるわけです。ただ三才ブックス社の倉庫には八木アンテナが残っていたから良かったのですが、Wikipediaによると地デジ化のせいでVHF用(つまりFM用)の八木アンテナは製造販売を終了しているようです。
「EX-5狂想曲」「過去最強のラジオICF-SW55説」という懐かしのソニー製ラジオを懐かしむ読み物が2つ。今年春、ソニーは最強のアナログラジオICF-EX5MK2の販売を終了し、直ちにオークションサイトでは値が吊り上がったのでした。実際の生産をしていた十和田オーディオ社がソニーからAIWAブランドを譲渡されたことと関係が有るのかもしれません。ともかく今ソニーはソッチ系のラジオを作るのを止めてしまったのです。
「i-dio受信報告書を送ろう」という読み物もあります。たしかにi-dioのサイトを見ていると受信報告書を受け付けている旨の記述があるのです。SINPOコードではなくC/N比とか何とか、スマホアプリを見ると表示されるらしいです。と言ってもスマホネットラジオのように聞くのではダメで、専用チューナーとスマホを繋いで聞かないといけません。amazonとかのサイトで買えるそうです。私はスマホを持っていないのでチューナーだけ買ってもダメかな。誰か聞いてみて。


『第3章 ラジオハイパーマニアックス』(あっ去年と第2章と第3章の順番が逆になってる。)
巻頭カラーページにもあったけど、スマートスピーカーradikoが聞ける世の中になりました。「スマートスピーカー×radiko.jpの楽しい遊び方」ではそんな世の中ならではの遊び方を提案しています。ここにもスマートスピーカーを利用した工作があります。
中央のカラーページにもあったけど、DSPというICチップの登場でラジオ受信機の造りには大きな変化が起きているようです。「製作しながら最新DSPラジオの仕組みを学ぼう!」ではその名の通りDSPについての説明とDSPラジオの製作をしています。この記事中の回路図に誤りがあるとのことなので必ず三才ブックスのサイトで正しい回路図をダウンロードして確認してください。
「ラジオパラダイス」誌をふりかえる読み物を挟んで、今度は「初心者向けループアンテナの製作」。初心者向けの名の通りループアンテナの仕組みの説明から部品の入手方法、製作の過程も写真をたくさん載せて丁寧に説明しています。


そのあとは読者投稿のページ、うえちゃんの著書「定年ラジオ」のこぼれ話があって『第4章』、「ラジオ新番組速報版」今回は24年前(発売当時)の1993年秋号の抜粋となります。表紙の顔ふーみん、中野文恵じゃなくて細川ふみえ。このときTBCラジオでは「RADIO倶楽部」が夕方のオールディーズプログラムではなく土曜の午前ワイドだったのです。担当は安田立和さんと中野文恵さん、二人とも当時は局アナでした。平日の朝ワイド「石川太郎のおはよういい朝」ではラジオカー川野目江里子と書いてあります。平日の午後ワイド「今日も大盛りラジオで元気」の月・火担当は福井弘文さんと鈴木恵子さん(水-金はナベともコンビ)、みんな当時は局アナでした。鈴木恵子さんって「ラジオな気分」金曜担当の田村恵子さんのことです。夜ワイドは「男女りすなぁ若者語」。佐藤育美さんに佐々木真奈美さん、当時は若かったんだなぁ、本間秋彦さんには髪の毛があるし(今でもあるって)。
別冊付録「RADIO-MANIA handobook 2018-2019」は本誌の表紙では「実践派向きのデータ手帳!」と紹介されています。2018年9月をスタートとする向こう1年間のスケジュール帳(主なラジオ局の開局日付き)、受信報告書の様式(和文、英文)とかありますからね。

*1:本書発売時はまだベイビーレイズJAPAN解散前でした、解散した今となってはただの「大矢・高見のしゃべりスタ」

*2:研究当時は八木教授の研究室の講師。それが「八木アンテナ」になる原因になるのかなぁ…。宇田さんものちに教授になります。そして現在、事情を知っている人たちは研究の中心だった宇田さんの名前を加えて「八木・宇田アンテナ」と呼びます。Wikipediaでも「八木・宇田アンテナ」で立項されています。